天才悪女は嘘を見破る〜王太子の教育係になったはずが溺愛されてます。すべてを奪った義妹一家は自滅しました〜
 実際にブリジット伯爵は話をしながら手のひらを隠し、『領地から』と『橋が壊れ』の部分で首元のクラバットに触れていた。さらに話が通った後に口の中で舌を動かすような仕草があった。

 いずれも隠し事をしたい時に現れる仕草だ。ブリジット伯爵とはさほど接点がないが、隠し事や嘘があるということで間違いないだろう。

 これも伯父一家の機嫌を損ねないために身につけた、対処法だ。なにが本心でなにが嘘なのか見抜き、怒りを買わないよう細心の注意を払っていた。

 その後に続く面会者も正直者はほぼいなかった。アマリリスが執務室にいることに嫌悪感を隠さない者も多く、ルシアンの評判は下がる一方のようだ。これは早急に対処しないとマズいかもしれない。

 やっと休憩時間になったので、アマリリスはルシアンに人払いを頼んだ。

「それで、話というのはなにかな? アマリリス先生」
「ルシアン殿下、早めに授業をしましょう。お時間を作れますか?」
「そうだな……午後なら比較的時間を作りやすいよ」
「承知しました。ちなみに午前中の面会者たちに嘘や隠し事があったのはご存じですか?」

 もしかしたらルシアンはわかった上で話を聞いていたのかもしれないと、アマリリスは念のために確認してみた。

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