天才悪女は嘘を見破る〜王太子の教育係になったはずが溺愛されてます。すべてを奪った義妹一家は自滅しました〜
 ところが、厨房へ入りユアンがお菓子を出してほしいと言うと、突然料理長が頭を下げてきた。

「え……? お菓子が出せないってどういうことだ?」
「それが……旦那様のご命令で、許可なく坊っちゃんたちに与えるなと……」

 料理長が申し訳なさそうに、眉尻を下げる。旦那様とは、今日からクレバリー侯爵家の当主になったエイドリックのことだ。当主命令では使用人である料理長にはどうにもできない。

 三人は仕方なくアマリリスの部屋に戻った。
 自分たちを疎ましく思う伯父が当主となれば、今後はあたりが強くなる一方だろう。

 それでもアマリリスにはふたりの心強い兄たちがいる。長兄のテオドールは青い雷の魔法を操り剣の腕が立ち、次兄のユアンは抜群に計算が得意で言葉巧みで大人ですらあっという間に説得してしまうのだ。

 そんな優秀な兄たちがいてくれれば、この苦境も乗り越えられる——そう思っていた。

 だが理不尽の嵐はこれだけでおさまらなかった。



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