天才悪女は嘘を見破る〜王太子の教育係になったはずが溺愛されてます。すべてを奪った義妹一家は自滅しました〜
 ルシアンはアマリリスの真紅の髪を掬い上げて、そっとキスを落として続ける。

「アマリリスに騙されて翻弄されるなら、それも本望だ」

 予想以上のルシアンの迫真の演技に、アマリリスは反応が遅れた。
 微細の表情を読み取っても、その言葉に嘘は見られない。薄紫の瞳に揺れている感情は、今までアマリリスが触れたことがないものだ。

 アマリリスが嘘か真か判断がつかないことなど、そうそうない。そんなアマリリスでも今のは一瞬真実なのではと思うほどだった。

 しかし腹黒教育のためにここにいるのだから、そのお役目をしっかりと果たさなければと気持ちを切り替える。

「ルシアン様。今の答えは素晴らしいと思いますが、いささか刺激が強いようでございます。使い所を選びますわね」
「そっか。やりすぎはよくないね。でもアマリリス先生が相手だと、調整が難しいな……」

 アマリリスの言葉で、ルシアンはいつもの朗らかな笑顔に戻った。内心でホッとしながら、ルシアンに疑問を投げかけた。

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