天才悪女は嘘を見破る〜王太子の教育係になったはずが溺愛されてます。すべてを奪った義妹一家は自滅しました〜
 だからアマリリスはルシアンのことを注意深く観察し続けた。王城に来てから一カ月が経つが、今のところ特にアマリリスからはルシアンに気のある素振りは見せていない。
 このままの距離感を保ちつつ、お役目を果たしてさっさと隣国へ逃げるのが一番ではとアマリリスは考えている。

「リリス先生、今日はどんなことを教えてくれるのかな?」
「本日は趣向を変えまして、相手の反応も含めてこう考えているという考察をお教えします」
「なるほど、僕の場合はそのように教えてもらえるとわかりやすいな。さすがリリス先生だね」

 朗らかな笑みを浮かべてルシアンはアマリリスを見つめる。紫水晶の瞳にはありありと恋情が浮かび、熱のこもった視線をアマリリスに向けていた。

(いつの間にか私のことを愛称呼びしているわ……着々と距離を詰められている気がするわね)

 クレバリー侯爵家の没落といい、ルシアン様の執着といい、アマリリスがのんびりしている暇はなさそうだ。
 しかもルシアンはとても魅力的な容姿で、いつも朗らかに笑顔を浮かべ、アマリリスにだけ強烈な愛情表現をしてくる。

 これを続けられたら、うっかり気持ちが傾いてしまうかもしれない。思えば婚約破棄された日の王命がアマリリスの人生で一番理不尽だったと、ここで気が付いた。

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