天才悪女は嘘を見破る〜王太子の教育係になったはずが溺愛されてます。すべてを奪った義妹一家は自滅しました〜
 そんなルシアンがある日、従弟のダーレンの婚約者が決まったということでお茶会に呼ばれた。その日も群がる令嬢たちに笑みを返して、ルシアンにとっては無意な時間を過ごしていたのだ。

 そんなルシアンを巡って、ご令嬢たちが争いを始めた。どちらがルシアンにふさわしいだとか意味のわかないことを言っていて、ルシアンは面倒な気持ちでいっぱいだ。

 そこに現れたのが、真紅の髪をなびかせた少女だった。琥珀色の大きな瞳は午後の太陽の光を受けてキラキラと輝いている。射貫くような真っ直ぐな視線から目を逸らせなかった。

『貴女たち、こんなところで言い争いなんてはしたないわよ。ルシアン殿下がお困りでしょう』
『でも、この子がわたしのことを馬鹿にしたのよ!』
『なによ、あんただってわたしを邪魔者だって言ったでしょ!』

 赤髪の少女は凛とした佇まいで、鈴を転がすような声で毒を吐く。

『……私からしたら、おふたりとも面倒なご令嬢としか思えませんわ。この場にふさわしくない行動をして恥ずかしくないの?』

 大輪の花のように可憐な見た目なのに、同年代の子供とは思えない毒舌。そのギャップが鮮烈で、苛烈で、ルシアンの心の奥深くまで入り込んでいく。

< 74 / 220 >

この作品をシェア

pagetop