天才悪女は嘘を見破る〜王太子の教育係になったはずが溺愛されてます。すべてを奪った義妹一家は自滅しました〜
 その言葉で言い争っていたご令嬢たちはハッと我に返り、急におとなしくなった。少女が集まっていた令嬢たちに視線を向けると、みんなバラバラと離れていく。やっと静かになって、ルシアンは残った少女に声をかけた。

『ありがとう。どうしていいかわからなくて、助かったよ』
『いえ、突然割り込んで申し訳ありません。その、今後のことを考えて私が悪者になった方がいいと思い口を挟みました』
『今後のこと?』
『はい、ルシアン殿下はこれから婚約者をお決めになるのですから、ご令嬢と揉めない方がいいと考えたのです』

 ルシアンは驚いた。自分より少し幼く見える少女が、この国の王太子の婚約者について考慮した上で喧嘩の仲裁に入ったというのだ。

(——欲しい。僕はこの子が、欲しい)

 ルシアンは目の前の少女が欲しいと思った。
 生まれて初めて渇望した。

 炎のような真紅の髪も、すべてを見透かすような琥珀色の瞳も。花よりも艶やかな美貌も。すべて自分のものにしたいと、ルシアンは思った。

『君の名前は?』
『申し遅れました、私はアマリリス・クレバリーと申します』

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