天才悪女は嘘を見破る〜王太子の教育係になったはずが溺愛されてます。すべてを奪った義妹一家は自滅しました〜
 ルシアンの教育について相談があると国王に伝言を頼んだ数日後、あっさりと謁見することになった。アマリリスはこのチャンスをものにするべく気合十分である。

「今日は父上との謁見でしょう? リリス先生は緊張していない?」
「ルシアン様、ご心配いただきありがとうございます。緊張などしておりませんわ。それよりもこんなにピッタリと寄り添う必要はないと思うのですが」

 謁見は夕方であったため、ルシアンへ午後の授業を済ませてから国王の執務室へ向かう予定だ。この日もルシアンに女性の躱し方を教えてほしいと頼まれ、散々密着しながら指導していた。

「どうして? 僕の隣は居心地が悪い?」
「このようにがっちりと腰を掴まれると、身動きが取れませんので不自由ですわ」

 アマリリスはルシアンの微細な表情も見逃さないようにしているが、読み取れるのはただただハチミツみたいに甘い愛情表現ばかりだ。

 これが慕っている相手なら言うことはないのだが、あいにくアマリリスの真の目的は別のところにある。むしろルシアンの愛情の深さや執着を知って、逃げ出したい気持ちがますます強くなっていた。

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