天才悪女は嘘を見破る〜王太子の教育係になったはずが溺愛されてます。すべてを奪った義妹一家は自滅しました〜
 いつものふんわりした雰囲気はどこへ行ったのか、アマリリスに愛を乞うルシアンになにも反応できない。
 あまりにも真っ直ぐで、あまりにも切なげで、あまりにも真剣で——。

(もう! 他にもっと素敵なご令嬢がたくさんいるじゃない! どうして私なんか……)

 アマリリスがルシアンの婚約者になったとしても、クレバリー侯爵家の後ろ盾など期待できない。遅かれ早かれ没落する家門だ。母方の親族も没交渉でそちらに頼ることもできない。

 たとえどんなにルシアンに望まれたとしても、アマリリスが王太子妃としてふさわしくないのは明白だった。

「時間ですので、失礼いたします」

 そんな思考ごと振り切るように、ルシアンの執務室を後にした。



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