天才悪女は嘘を見破る〜王太子の教育係になったはずが溺愛されてます。すべてを奪った義妹一家は自滅しました〜
 アマリリスが成長して女性らしくなるにつれ、エミリオの態度はより不快なものへ変わっていた。舐め回すような視線でアマリリスの肢体を見つめてくる。
 ロベリアはそれを煽るような言葉を口にして、アマリリスの婚約者と堂々と仲睦まじくしていた。

「はっ、公爵家のダーレンか。あいつはそのうちロベリアのものになる。だからお前は俺の愛人になればいいんだよ」
「そうよ、ダーレン様はわたしのことしか見えていないの。あんたはさっさとあきらめなさい」
「それ以上おっしゃるなら公爵家に助けを求めますわ。公爵夫人は厳しいお方だとご存じですよね?」

 ダーレンは格上の公爵家嫡男だから、今のところエミリオはアマリリスに手を出せない。ロベリアもまた、現時点では婚約者でもなんでもないのでどうにもできない。

 だからこそ、いつもきっぱりと強気な発言でエミリオとロザリアを退けていた。ダーレンは頼りにならないが、公爵夫人には可愛がってもらっている。ふたりともそれをわかっているから、こう言えば引き下がるしかない。

 文句を言うエミリオとロベリアを無視して厨房へ入り、赤くなった頬を冷やしながらアマリリスはぼんやりと考えた。

 兄たちが屋敷から追い出されて八年経った。三人ともとっくに成人しているが、兄たちが戻ってこないのは幸せに暮らしているからなのか、戻ってくる余裕がないからなのかわからない。

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