天才悪女は嘘を見破る〜王太子の教育係になったはずが溺愛されてます。すべてを奪った義妹一家は自滅しました〜
「ミクリーク公爵、ご無沙汰していたね」
「我がフレデルトの若き獅子。ご無沙汰しておりました」

 ミクリーク公爵は恭しくルシアンに礼をするが、アマリリスへ視線を向けることはない。存在すら認めないという風に拒絶の姿勢を見せた。

(ふふ、そうよねえ。悪女と名高い私が婚約者では、フレデルト王家にふさわしくないと思うわよね)

 想定内の反応にアマリリスは余裕げに笑みを浮かべたままだ。

「それと、こちらは婚約者候補のアマリリス嬢だ」
「初めましてですな、クレバリー侯爵令嬢」
「お初にお目にかかります。アマリリス・クレバリーでございます。ミクリーク公爵におかれましてはご機嫌麗しゅう存じます」

 アマリリスが完璧な淑女の礼をするが、ミクリーク公爵は口角を引き上げ左手で右手首を掴んでいる。ほんの一瞬だけ鼻に皺が寄ったことから、アマリリスに対する嫌悪や怒りの感情を必死に抑えているようだ。

(目元は笑っていないから愛想笑いね。ミクリーク公爵は忠心厚いお方だから、ルシアン様の前では歓迎したふりをして裏では粗探ししているというところかしら)

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