天才悪女は嘘を見破る〜王太子の教育係になったはずが溺愛されてます。すべてを奪った義妹一家は自滅しました〜
 思わぬ事実にアマリリスの心が揺れた。
 両親が亡くなり兄たちも養子に出され不安でたまらなかったあの時、アマリリスを支えてくれたのは使用人たちの愛情だ。彼らがいてくれたからここまでやってこれたのだが、それがルシアンのおかげだったなんて思いもよらないことだった。

(確かに私が屋敷を出る時に受け取った金貨は、使用人たちから集めたにしては高額だったわ……今までの誕生日のお祝いもそうだったのかしら?)

 胸のうちは大きく騒ついていたがなんとか気持ちを切り替えて、その後もルシアンが貴族たちを説き伏せていくのを見守る。
 そうして外交を担当するヒギンズ伯爵の誤解を解き、穏やかに話しをしていた。

「そういえば、ルシアン殿下。先月東の国で魔物に強い騎士団の視察に行ったのですが、そこの騎士団長が魔法剣の使い手だったのです」
「へえ、魔法剣とは珍しいね」

 魔法剣とは剣にさまざまな魔法をまとわせる戦闘方法で、非常に戦闘能力が高いが魔法と剣技を極めなければならず使い手は限られている。国中を探しても両手で数えられる魔法剣の使い手は引く手あまたで、安全で稼げる仕事についていることが多い。

(魔法剣の騎士が辺境伯の騎士団長なんて、野心がないのね。近衛騎士にだって採用されるでしょうに)

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