【短】「花火を背にした少女」
 そういえば、一昨日(おととい)、あいつに八つ当たりしたんだった。

 時間を稼ぐために無理難題を吹っかけて…。

 歌月理(うつり)に絵なんか、描けるわけないのに。




「家に来てって…」




 窓の外を見る。もう真っ暗だ。

 閉め忘れたカーテンを閉めながら、[今から?]と一応聞き返しておく。

 肯定の返事はすぐに来た。


 俺は画材を片付けて、キャンバスを隠すように仕舞ってから、親に一言告げて歌月理(うつり)の家に向かった。




****



 俺の家から歌月理(うつり)の家までは、歩いて5分もかからない。

 適当に履いてきたサンダルを脱いで、本人に出迎えられながら歌月理(うつり)の家に上がると、真っ暗な部屋に通された。

 歌月理(うつり)は壁伝いに部屋の奥へ向かう。




「電気つけるぞ」
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