【短】「花火を背にした少女」
 一体なにがしたいんだと、腕を組んで近くの壁にもたれかかる。

 歌月理(うつり)は「よいしょ…」とつぶやいて、脚立の上でがさごそとなにかを始めた。




「よし」




 脚立の一番上の段に座った歌月理(うつり)は、揃えた膝に両肘を置いて、カメラを構えた。

 芸術を描くって言っておいて、けっきょく写真を撮る気なのか?


 っていうかその角度、パンツ見えるし。

 暗いから見えないけど。

 羞恥心ないのかよ。




「おい」


「しー。もう少しだから、待ってて」


「もう少しって…」




 なにがだよ。




「一応聞くけど、なにを撮るつもりなんだ?」 


「夜に映える光」




 夜に映える光?月でも撮るつもりなのか?

 そんなもの、と思いながらじっとカメラを構えている歌月理(うつり)をながめると、不意に思い出した。
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