【短】「花火を背にした少女」
何も考えられない頭に、心に、次々と打ち上がる花火が焼き付く。
窓の前に置かれたキャンバス。
窓の横で脚立に座って写真を撮り続ける歌月理。
異質だ。
この部屋の光景は全部が変わっている。
「…」
「あ、第1部終わったみたい。んーと…」
ドドドドォン、と連続で赤、緑、青、黄色の花火が打ち上がったあと、しん、と夜が静けさを取り戻した。
そこに歌月理の間抜けな声がひびいて、現実に引き戻される。
「うん、これかな。ほら見て、絵翔!」
脚立から降りた歌月理は、俺のもとに歩み寄ってきて、カメラの画面を見せた。
小さなその画面に映っているのは、赤、緑、青、と混じった光に照らされたキャンバス。