青白磁のエンドロール





「……ごめん、握ってた。悪気なかった」 

 ホントは嫌だって思っても、言い出せなかったよ。っていう微妙な作り笑顔を返されると思って、目を逸らしたい気持ちでいると、意外にもちせはにっこり笑ったのだ。

「ちせって、呼んだ」 

「あれは……」

「でも、呼んでた」

 相手が下の名前で呼んでくれたから、俺はちせのことを高校の頃のように“守保”とも一度も呼べなくて、多分……ちせって言いたかったのだろう。

 きっと一度守保って呼んだら、ちせはこの先ずっと“守保”になる。





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