青白磁のエンドロール
マイナスだったものがゼロまで戻り、それ以降動きはしない。
……というのは、同級生として青鷹君と話をする機会が、全くないからである。九年分の壁があの日にカタタッて不器用に崩れたとしても、急に仲良くなるきっかけもなく、そもそも学生の頃も……青鷹君と仲の良い関係ではなかったしな。
それに、当時の自分サイドの話は……あのタイミングでは、できなかった。
コーチたちと違って、決まった時間に出社して、決まった時間に退社する生活リズムは一定。ある日の出社時に青鷹君の背中を一度見つけたものの、気づかぬ彼は先に館内に入って行った。
わざわざ呼び止めてまで、話す内容が見つからない。
“ちせ”の名前は、光の空気に浮かび上がった後に、またすぐ底に沈んでいった。