アラフィフ・ララバイ
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「で、結局お母さんは大丈夫だったの?」

詩織さんは心配を通り越して少し怒ったような顔で尋ねる。

「それがね……」

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ホールのロビーの奥に、スタッフ関係者以外立ち入り禁止の札がかけられた部屋があり、そこに私たち二人は通された。

八畳ほどの広さのフローリングの角に三人掛けの黒いソファーが一つ。

真ん中にはテーブルと椅子が四つ並べられただけの簡素な部屋。

華やかなロビーとはある意味別次元の空間。

母は、すぐにソファーに横にならせてもらう。

痛みは定期的に襲ってくるようで、しばらくは様子を見ることにした。

冴木さんは、部屋に設置された戸棚からブランケットを取り出し、母の肩にそっと掛けると腕時計に目をやる。

「しばらくこちらでお休みください。私は少し仕事場に戻ります。何かありましたら、すぐ外にいるスタッフにお声かけ下さい」

「はい!ありがとうございました!」

私はペコリと頭を下げた。

うわー。なんてイケメンの上に親切な男性なんだ。

あんなに優しく接してくれるイケメンなんてご無沙汰だったから、母よりもそちらに感動していた。

違う違う。

「お母さん、どう?」

冴木さんが部屋を出ていくとすぐに母の横に座る。

「少しましになってきたよ。この近くにトイレあるかい?」

「トイレ?」

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