銀河特急777 銀河周遊編 心惑う惑星間旅行 源太郎は何を見たのか?
第1章 旅立ち
桂木源太郎は東京方面財務局経済課の平凡な職員である。 彼の父、清正はハイパーエネルギータンカーの一等航海士であった。
だが難病を患って早期退職を余儀なくされた。
そこで彼は退職金をはたいて一枚のチケットを源太郎に買い与えたのである。
「10年無遅刻無欠勤で表彰されたのだろう? なら、これで銀河旅行を思う存分に楽しんできなさい。」
それは銀河特急アストロライナーの2等指定席券だった。
(父さん、これじゃああんまりだよ。 せっかくの退職金が、、、。」 「いいんだ。 俺はもうすぐ死ぬ体だ。 俺の分も存分に楽しんできなさい。」
経済課10年無遅刻無欠勤で表彰され、1年の休暇を貰った源太郎は遥かな銀河に思いを寄せていた。 (父さんも夢だって言っていた銀河旅行に行けるんだ。 これは夢じゃない。)
子供の頃から空を飛ぶ宇宙列車を毎晩のように追い掛けていたことが懐かしく思い出されてくる。
父さんや妹の早苗と夜空を見上げながら追い掛けていたあの列車についに乗れる日が来たのだ。
でも父さんは出発の半年前に死んでしまった。 「源太郎、きっと乗るんだぞ。 俺は銀河系の何処かでお前を見守っているからな。」
そう言って息を引き取った父さんに源太郎は誓った。 必ずアストロライナーに乗って銀河系を見てくると、、、。
揺れ惑う 銀河の闇に映り来る 無限の時に 心ときめき。
果てしない広大な宇宙の中で日々幾千幾万の星が生まれ瞬いている。
無限の時の中で生まれた命は、やがてそれぞれに開花し散っていく。
そのドラマは誰にも知られること無く永遠に繰り返されて行く。 人間はそのドラマをどれほど知っているだろうか?
その中を今日も超光速で列車が駆け抜けていく。
「こちら777号。 間もなく東京国際地上駅の軌道に入る。」 「運行管理本部、確認。」
「停車ホームは72番。 停車ポイントは031sm。」 「了解。」
「減速 毎時15パーセント。 ハイパーブレーキ作動。」 「777号 東京国際地上駅への入線を確認。」
西暦2385年、人々の暮らしはほぼオートメーション化され、信じられないほどに便利になった。
エネルギー問題もそのための公害問題も解消され、ここ 東京でもまるで大古の様な澄み切った空が戻ってきた。
その一方で人々は開拓された太陽系外惑星に移住して、それぞれの惑星でそれぞれの文化を開花させてもいた。
「本当に大丈夫なんだろうねえ?」 「荷物も確認したしチケットも持ったし大丈夫だよ。」
母、春子は洗い物をしながら源太郎を心配そうに見詰めている。
「何か有ったら連絡するんだよ。」 「連絡したって遠すぎて来れないじゃない。 大丈夫だよ。」
俺は心配してやまない母さんに見送られながら昼過ぎに我が家を出た。
辺りには超近代的な建物が並んでいる。 その一階にはハイパーカーがずらりと並んで出発を待っている。
この車は全てが自動設定になっていてエネルギーや走行ルートの心配をすることも無い。
ショッピングタワーの屋上には荷物運搬用のハイパードローンが待機している。
そして人々は賑やかに話しながらハイパーロードを歩いている。 便利になったもんだ。
昔のように重たい荷物を抱えて汗を流すことも無いのだから、、、。
俺は新しい発見でもしたような顔で駅へ向かって歩いている。 旅行ともなると何かが違って見えるらしい。
駅のインフォメーションブースにはチケットの引換券やマネーカードを持った旅行客らしい人たちが並んでいる。
そこから離れた物陰にはチケットを買えない人たちが羨ましそうに蹲っていた。
「アンドロメダ方面の急行列車はこちらです。」
「カメロニア観光環状線にお乗りの方はこちらでチケットをお求めください。」
「ホームへ入場される方は特定入場券が必要ですので、こちらでお買い求めください。」
あちらこちらでチケットを売る店員の声が聞こえる。 (ずいぶんとたくさん居るんだなあ。 アンビターナに行く人も居るんだろうか?)
「惑星 アンビターナに行かれるんですね? 支払い済みチケットはこちらになります。」
接客係は笑顔で白いケースに入ったチケットを取り出した。
夕方である。 「軽く腹ごしらえをしようか。」
そう思った俺は駅前の食堂へ入っていった。 アストロライナーの発車まではまだ7時間くらい有るらしい。
店内はごった返している。 旅に出る人、見送る人、出迎える人、それぞれがそれぞれにいろんな思いを抱えながら食べているらしい。
「俺も母さんたちを連れてくれば良かったな。」 何しろ、宇宙では何が起きるか分からない。
地球に居てもそうなのに、誰も来れない宇宙でそうなったらどうするのか?
安全だと言われている銀河高速鉄道でも絶対の保証は無いのだから。
子供の頃、空を自由に走り回る列車を不思議そうに眺めていた。
「あんな列車になんて乗れないよなあ。」
地上を走り回る列車には嫌というほどに乗ったんだけど、さすがに宇宙列車には、、、。
そう思っていた俺がアストロライナーのチケットを持ってここに来ているんだ。 信じられない。
軽く夕食を済ませた俺はチケットナンバーを確認してから駅の中へ入っていった。
その駅前にもチケットを買えない人たちが屯している。 彼らは下町の裏町 ブラックタウンと呼ばれている荒れ果てた地域に住んでいる人たちだ。
銀河高速鉄道が開業した頃、金に物を言わせて成り済ましをする人たち、チケットの無断譲渡をする人たちや強奪する人たちが多く現れた。
そのほとんどは有力な政治家や大企業の経営者だったという。
そこで国と銀河高速が協力して有力者たちを次々と訴追していった。
さらにはその後継者たちの特権を剥奪していったのである。
特権と国の保護を絶たれた人たちはそれ以後、ブラックタウンでその日暮しをしているという。
その人たちを見張っているのか、プロテクトスーツに身を包んだ銀河警察がウロウロしている。 (これじゃあ落ち着かないぜ。)
旅行者専用通路と書かれた表示板を見ながらハイパーエレベーターを目指す。 瞬間移動しているようなすごいエレベーターである。
三階の改札口に出ると「ここにチケットを入れてください。」と機械の乾いた声が指図してくる。
チケットチェックを済ませなければオープンゲートは開かない。 替え玉乗車を防ぐためなのだろう。
目の前にはだだっ広い空間が広がっていて数え切れないほどの旅行客が行き交っているのが見える。
「22時45分発、プロメタリア経由エルアラバード行き準急 デスバラード号 間もなく入線します。」
「23時00分発 アンドロメダ中央行き特急 アンドロメディア号 38番ホームに停車中です。」
何処からともなくアナウンスの声が聞こえてくる。 アナウンスマシーンが駆けずり回っているようだ。
「間もなく72番ホームに銀河中央環状線 銀河横断線経由アンビターナ行き特急 アストロライナー号が入線いたします。 ご注意ください。」
ここは日本の中心駅らしく、深夜とはいってもあちらこちらの路線から列車が到着しては発車していく。
一階は国内線。 二階は深夜に出発することが多い国際線。
そして三階は銀河高速鉄道である。
同じような駅がニューヨーク シドニー パリに在って緊急時にはどの駅でも停車できるようになっている。
今夜も色鮮やかな列車がホームというホームに停車して乗客を待っている。
ここ、72番ホームには今 アストロライナー号がゆっくりと入線しようとしていた。
だが難病を患って早期退職を余儀なくされた。
そこで彼は退職金をはたいて一枚のチケットを源太郎に買い与えたのである。
「10年無遅刻無欠勤で表彰されたのだろう? なら、これで銀河旅行を思う存分に楽しんできなさい。」
それは銀河特急アストロライナーの2等指定席券だった。
(父さん、これじゃああんまりだよ。 せっかくの退職金が、、、。」 「いいんだ。 俺はもうすぐ死ぬ体だ。 俺の分も存分に楽しんできなさい。」
経済課10年無遅刻無欠勤で表彰され、1年の休暇を貰った源太郎は遥かな銀河に思いを寄せていた。 (父さんも夢だって言っていた銀河旅行に行けるんだ。 これは夢じゃない。)
子供の頃から空を飛ぶ宇宙列車を毎晩のように追い掛けていたことが懐かしく思い出されてくる。
父さんや妹の早苗と夜空を見上げながら追い掛けていたあの列車についに乗れる日が来たのだ。
でも父さんは出発の半年前に死んでしまった。 「源太郎、きっと乗るんだぞ。 俺は銀河系の何処かでお前を見守っているからな。」
そう言って息を引き取った父さんに源太郎は誓った。 必ずアストロライナーに乗って銀河系を見てくると、、、。
揺れ惑う 銀河の闇に映り来る 無限の時に 心ときめき。
果てしない広大な宇宙の中で日々幾千幾万の星が生まれ瞬いている。
無限の時の中で生まれた命は、やがてそれぞれに開花し散っていく。
そのドラマは誰にも知られること無く永遠に繰り返されて行く。 人間はそのドラマをどれほど知っているだろうか?
その中を今日も超光速で列車が駆け抜けていく。
「こちら777号。 間もなく東京国際地上駅の軌道に入る。」 「運行管理本部、確認。」
「停車ホームは72番。 停車ポイントは031sm。」 「了解。」
「減速 毎時15パーセント。 ハイパーブレーキ作動。」 「777号 東京国際地上駅への入線を確認。」
西暦2385年、人々の暮らしはほぼオートメーション化され、信じられないほどに便利になった。
エネルギー問題もそのための公害問題も解消され、ここ 東京でもまるで大古の様な澄み切った空が戻ってきた。
その一方で人々は開拓された太陽系外惑星に移住して、それぞれの惑星でそれぞれの文化を開花させてもいた。
「本当に大丈夫なんだろうねえ?」 「荷物も確認したしチケットも持ったし大丈夫だよ。」
母、春子は洗い物をしながら源太郎を心配そうに見詰めている。
「何か有ったら連絡するんだよ。」 「連絡したって遠すぎて来れないじゃない。 大丈夫だよ。」
俺は心配してやまない母さんに見送られながら昼過ぎに我が家を出た。
辺りには超近代的な建物が並んでいる。 その一階にはハイパーカーがずらりと並んで出発を待っている。
この車は全てが自動設定になっていてエネルギーや走行ルートの心配をすることも無い。
ショッピングタワーの屋上には荷物運搬用のハイパードローンが待機している。
そして人々は賑やかに話しながらハイパーロードを歩いている。 便利になったもんだ。
昔のように重たい荷物を抱えて汗を流すことも無いのだから、、、。
俺は新しい発見でもしたような顔で駅へ向かって歩いている。 旅行ともなると何かが違って見えるらしい。
駅のインフォメーションブースにはチケットの引換券やマネーカードを持った旅行客らしい人たちが並んでいる。
そこから離れた物陰にはチケットを買えない人たちが羨ましそうに蹲っていた。
「アンドロメダ方面の急行列車はこちらです。」
「カメロニア観光環状線にお乗りの方はこちらでチケットをお求めください。」
「ホームへ入場される方は特定入場券が必要ですので、こちらでお買い求めください。」
あちらこちらでチケットを売る店員の声が聞こえる。 (ずいぶんとたくさん居るんだなあ。 アンビターナに行く人も居るんだろうか?)
「惑星 アンビターナに行かれるんですね? 支払い済みチケットはこちらになります。」
接客係は笑顔で白いケースに入ったチケットを取り出した。
夕方である。 「軽く腹ごしらえをしようか。」
そう思った俺は駅前の食堂へ入っていった。 アストロライナーの発車まではまだ7時間くらい有るらしい。
店内はごった返している。 旅に出る人、見送る人、出迎える人、それぞれがそれぞれにいろんな思いを抱えながら食べているらしい。
「俺も母さんたちを連れてくれば良かったな。」 何しろ、宇宙では何が起きるか分からない。
地球に居てもそうなのに、誰も来れない宇宙でそうなったらどうするのか?
安全だと言われている銀河高速鉄道でも絶対の保証は無いのだから。
子供の頃、空を自由に走り回る列車を不思議そうに眺めていた。
「あんな列車になんて乗れないよなあ。」
地上を走り回る列車には嫌というほどに乗ったんだけど、さすがに宇宙列車には、、、。
そう思っていた俺がアストロライナーのチケットを持ってここに来ているんだ。 信じられない。
軽く夕食を済ませた俺はチケットナンバーを確認してから駅の中へ入っていった。
その駅前にもチケットを買えない人たちが屯している。 彼らは下町の裏町 ブラックタウンと呼ばれている荒れ果てた地域に住んでいる人たちだ。
銀河高速鉄道が開業した頃、金に物を言わせて成り済ましをする人たち、チケットの無断譲渡をする人たちや強奪する人たちが多く現れた。
そのほとんどは有力な政治家や大企業の経営者だったという。
そこで国と銀河高速が協力して有力者たちを次々と訴追していった。
さらにはその後継者たちの特権を剥奪していったのである。
特権と国の保護を絶たれた人たちはそれ以後、ブラックタウンでその日暮しをしているという。
その人たちを見張っているのか、プロテクトスーツに身を包んだ銀河警察がウロウロしている。 (これじゃあ落ち着かないぜ。)
旅行者専用通路と書かれた表示板を見ながらハイパーエレベーターを目指す。 瞬間移動しているようなすごいエレベーターである。
三階の改札口に出ると「ここにチケットを入れてください。」と機械の乾いた声が指図してくる。
チケットチェックを済ませなければオープンゲートは開かない。 替え玉乗車を防ぐためなのだろう。
目の前にはだだっ広い空間が広がっていて数え切れないほどの旅行客が行き交っているのが見える。
「22時45分発、プロメタリア経由エルアラバード行き準急 デスバラード号 間もなく入線します。」
「23時00分発 アンドロメダ中央行き特急 アンドロメディア号 38番ホームに停車中です。」
何処からともなくアナウンスの声が聞こえてくる。 アナウンスマシーンが駆けずり回っているようだ。
「間もなく72番ホームに銀河中央環状線 銀河横断線経由アンビターナ行き特急 アストロライナー号が入線いたします。 ご注意ください。」
ここは日本の中心駅らしく、深夜とはいってもあちらこちらの路線から列車が到着しては発車していく。
一階は国内線。 二階は深夜に出発することが多い国際線。
そして三階は銀河高速鉄道である。
同じような駅がニューヨーク シドニー パリに在って緊急時にはどの駅でも停車できるようになっている。
今夜も色鮮やかな列車がホームというホームに停車して乗客を待っている。
ここ、72番ホームには今 アストロライナー号がゆっくりと入線しようとしていた。
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