銀河特急777 銀河周遊編 心惑う惑星間旅行 源太郎は何を見たのか?
「皆様にお知らせいたします。 この列車は地球の大気圏を出まして安定軌道に入りました。 次の停車駅 火星ステーション到着は四日後の予定でございます。
どなた様もそれまでごゆっくりお過ごしくださいませ。」
遠く地球へ向かう列車が通り過ぎて行った。 その向こうには火星がぼんやりと見えている。
軌道の上を荷物運搬用のロケットが飛んで行った。 客室のドアが開いた。
見ると半透明の生物が歩いている。 まじまじと見詰めている俺に気付いたのか、その生物が口を開いた。
「私はアウトグレーテス星の者です。 あなたは初めてなのですね?
もっと驚くような出会いが有るでしょう。 宇宙にはいろんな生物が暮らしているのですから。」
その生物はそれだけ言うと通り過ぎて行った。
俺は腹ごしらえをしようと席を立った。 食堂車へ来た時だった。
(誰かに似てるな。) やや長髪でパイプを咥えて扉にもたれている男を見掛けたのだ。
男は俺に気付いたのか、軽く会釈をした。 なんだか懐かしい匂いがしたのだが、、、。
食堂車の扉を開けてみる。 大きなシャンデリアが辺りを照らしていた。
常連らしい客が数人固まって大声で話している。 「3年ぶりだなあ。 今回も楽しもうじゃないか。」
「ああそうだ。 あの星もまだまだ変わらないだろうからねえ。」 「そうだそうだ。 飲みながら賑やかにやろうじゃないか。」
進行方向に向かって左側にテーブルが並んでいる。 d-26と書かれたテーブルに俺は落ち着いた。
メニュー表にはその停車駅に合わせたリストが載っている。 「そうだな、、、ステーキとビールにするか。」
しばらくして厨房から出てきた女に注文する。 「畏まりました。 しばらくお待ちください。」
その女は見るからに人間ではない。 されどロボットでもない。
だからってサイボーグでもない。 (あの女はいったい、、、?)
俺は何だか奇異な感覚を持ってその女を見詰めてしまった。
やがて料理を運んできた女が俺の視線に気付いて口を開いた。
「私はアニープロメシア。 30年前に改造されたテクノ人間です。 どうぞよろしく。」
お辞儀をする動作もしなやかでスムーズである。 俺はますます彼女が気になってしまった。
やがて客が一人二人と出ていき、残ったのは俺だけになってしまった。 女は案内灯を消すと俺の向かい側に座った。
「今回が初めてなのですか?」 「そう。 休暇が取れたからやっと乗ったんだ。」
「そうなんですね。 私はもう30年 この列車に乗っています。」 (どう見ても20代にしか見えないのにそれはおかしいだろう。)
いぶかしげに見詰める俺に女が話し続けた。 「若く見えるように造ってもらったんです。 ずっとこのままなんです。」
「するってと、俺が赤ん坊の頃には乗ってたんだね?」 「そうなるんですか?」
テーブルの上に置いた俺の手に女が手を重ねてきた。 「暖かいね。」
「肌は全てコーティングです。 その下にはマイクロヒーターが埋め込まれてるんですよ。」
彼女はそう言うと厨房に戻って熱いコーヒーを入れてきた。
銀河高速鉄道が営業を始めたのは西暦2235年。 150年前のことだ。
太陽系外惑星の探査をしていた惑星探査研究所のロケットが未知の鉄道を発見したことに始まる。
その日、惑星探査をしていた若い研究者 カールスペンダーは不思議な鉄道が走っていることに気付いた。
「あの列車は何処から来ているんだ?」 彼は惑星探査の任務を忘れたように謎の列車を追い掛け続けた。
「あれは確かに空間を走っている。 特殊なシールドに包まれているようだ。」
地球に帰ってきた彼は早速、国際惑星探査学会に報告した。 ところが、、、。
「そんなことが有る物か。」 「空飛ぶ列車だって? 夢でも見たんだろうよ。」
彼の話に耳を傾ける研究者は一人も居なかった。
居たたまれなくなったスペンダーは所長であるジョージダニエルに話をした。 ジョージは取り合えず聞くだけ聞いておこうと思った。
この広い宇宙のことだ。 如何なる生物が居て如何なる文明が発達していてもおかしくはない。
スペンダーは話し続けた。 「惑星移住計画を進めるためにも高速で移動できる乗り物が必要ではないでしょうか?」
「そりゃあ、理屈では分かるがね、、、。 でも今は惑星探査で精一杯だよ。 無理だ。」 「そうは言ってもロケットでは限界が有ります。」
「だけどねえ、開発コストも馬鹿にならんし、だいたい、そこまで行く燃料はどうするんだ?」 「それならこれからでも研究できますよ。」
「若いってのはいいもんだねえ。 たくさんの夢が有って。」 「夢なんかじゃありません。 現実を話してるんです。」
「分かった。 分かったよ。」
スペンダーはその後も未知の列車を追い掛け続けた。 「君はまだその列車を追い掛け続けてるのか? そんな物が人間にとって重要なのかね?」
「アンドロメダ方面から737銀河へ向かっている経路も発見しました。」 「君はまだそんな夢を見てるのかね?」
批判は溢れ返っている。 それでもスペンダーは撮影した画像を学会へ提出した。
「こんな物を我々に見せてどうしろと言うんだね?」 「君はとうとう頭がおかしくなったのか?」
「君はまだ若いんだろう? 家に帰ってママのおっぱいでも飲んでいたらどうなんだ?」
研究者たちはただただ笑い転げるだけで誰も聞こうとはしない。
「この画像ですが、精密な分析をしたところ、彼の捏造でも光のユレギュラーでもないことがはっきりしました。 確かに特殊なシールドの中を列車が走っている画像です。」
「君たちは栄誉有る学会を愚弄する気か! 冗談にも程が有るぞ!」
「愚弄などしていませんよ。 これは真実です。」 研究者たちの嘲笑に狼狽えていたスペンダーを養護したのはジョージだった。
「我が国際惑星探査学会は君たちを追放することを決した。」
「追放?」 「まあ、いいじゃないか。 従来通りの惑星探査は学会に大いにやってもらえばいい。」
ジョージはそれから電磁空間軌道を走る特殊列車の研究を急ピッチで進めることを決断して宇宙交通開発機構を設立した。
テクノ人間の開発もまだまだだった22世紀、ジョージダニエルは空間軌道を走る列車に不思議な魅力を感じていたのだ。
それから研究は急ピッチで進められた。 「アンドロメダから来る前にこちらから挨拶しようじゃないか。」
ところが軌道安定装置と電磁ブレーキの開発がおぼつかない。 ジョージの苦悩は深かった。
「ぼくがアンドロメダに行ってデータを公開するように交渉してきます。」 駆け出しの研究者 服部義雄は単身でアンドロメダへ乗り込んで行った。
しかしデータが公開されたのは10年後のことで彼はデータを持ち帰る途中で死んでしまった。
「これはすごい。」 「どうしたんですか?」
データを解読したジョージは驚いた。 「無軌道走行システムも公開されている。 これが有ればどんな列車でも走らせられる。 すごいもんだ。」
それからしばらくして全てのデータが実行され銀河高速鉄道株式会社が操業を開始したのだった。
どなた様もそれまでごゆっくりお過ごしくださいませ。」
遠く地球へ向かう列車が通り過ぎて行った。 その向こうには火星がぼんやりと見えている。
軌道の上を荷物運搬用のロケットが飛んで行った。 客室のドアが開いた。
見ると半透明の生物が歩いている。 まじまじと見詰めている俺に気付いたのか、その生物が口を開いた。
「私はアウトグレーテス星の者です。 あなたは初めてなのですね?
もっと驚くような出会いが有るでしょう。 宇宙にはいろんな生物が暮らしているのですから。」
その生物はそれだけ言うと通り過ぎて行った。
俺は腹ごしらえをしようと席を立った。 食堂車へ来た時だった。
(誰かに似てるな。) やや長髪でパイプを咥えて扉にもたれている男を見掛けたのだ。
男は俺に気付いたのか、軽く会釈をした。 なんだか懐かしい匂いがしたのだが、、、。
食堂車の扉を開けてみる。 大きなシャンデリアが辺りを照らしていた。
常連らしい客が数人固まって大声で話している。 「3年ぶりだなあ。 今回も楽しもうじゃないか。」
「ああそうだ。 あの星もまだまだ変わらないだろうからねえ。」 「そうだそうだ。 飲みながら賑やかにやろうじゃないか。」
進行方向に向かって左側にテーブルが並んでいる。 d-26と書かれたテーブルに俺は落ち着いた。
メニュー表にはその停車駅に合わせたリストが載っている。 「そうだな、、、ステーキとビールにするか。」
しばらくして厨房から出てきた女に注文する。 「畏まりました。 しばらくお待ちください。」
その女は見るからに人間ではない。 されどロボットでもない。
だからってサイボーグでもない。 (あの女はいったい、、、?)
俺は何だか奇異な感覚を持ってその女を見詰めてしまった。
やがて料理を運んできた女が俺の視線に気付いて口を開いた。
「私はアニープロメシア。 30年前に改造されたテクノ人間です。 どうぞよろしく。」
お辞儀をする動作もしなやかでスムーズである。 俺はますます彼女が気になってしまった。
やがて客が一人二人と出ていき、残ったのは俺だけになってしまった。 女は案内灯を消すと俺の向かい側に座った。
「今回が初めてなのですか?」 「そう。 休暇が取れたからやっと乗ったんだ。」
「そうなんですね。 私はもう30年 この列車に乗っています。」 (どう見ても20代にしか見えないのにそれはおかしいだろう。)
いぶかしげに見詰める俺に女が話し続けた。 「若く見えるように造ってもらったんです。 ずっとこのままなんです。」
「するってと、俺が赤ん坊の頃には乗ってたんだね?」 「そうなるんですか?」
テーブルの上に置いた俺の手に女が手を重ねてきた。 「暖かいね。」
「肌は全てコーティングです。 その下にはマイクロヒーターが埋め込まれてるんですよ。」
彼女はそう言うと厨房に戻って熱いコーヒーを入れてきた。
銀河高速鉄道が営業を始めたのは西暦2235年。 150年前のことだ。
太陽系外惑星の探査をしていた惑星探査研究所のロケットが未知の鉄道を発見したことに始まる。
その日、惑星探査をしていた若い研究者 カールスペンダーは不思議な鉄道が走っていることに気付いた。
「あの列車は何処から来ているんだ?」 彼は惑星探査の任務を忘れたように謎の列車を追い掛け続けた。
「あれは確かに空間を走っている。 特殊なシールドに包まれているようだ。」
地球に帰ってきた彼は早速、国際惑星探査学会に報告した。 ところが、、、。
「そんなことが有る物か。」 「空飛ぶ列車だって? 夢でも見たんだろうよ。」
彼の話に耳を傾ける研究者は一人も居なかった。
居たたまれなくなったスペンダーは所長であるジョージダニエルに話をした。 ジョージは取り合えず聞くだけ聞いておこうと思った。
この広い宇宙のことだ。 如何なる生物が居て如何なる文明が発達していてもおかしくはない。
スペンダーは話し続けた。 「惑星移住計画を進めるためにも高速で移動できる乗り物が必要ではないでしょうか?」
「そりゃあ、理屈では分かるがね、、、。 でも今は惑星探査で精一杯だよ。 無理だ。」 「そうは言ってもロケットでは限界が有ります。」
「だけどねえ、開発コストも馬鹿にならんし、だいたい、そこまで行く燃料はどうするんだ?」 「それならこれからでも研究できますよ。」
「若いってのはいいもんだねえ。 たくさんの夢が有って。」 「夢なんかじゃありません。 現実を話してるんです。」
「分かった。 分かったよ。」
スペンダーはその後も未知の列車を追い掛け続けた。 「君はまだその列車を追い掛け続けてるのか? そんな物が人間にとって重要なのかね?」
「アンドロメダ方面から737銀河へ向かっている経路も発見しました。」 「君はまだそんな夢を見てるのかね?」
批判は溢れ返っている。 それでもスペンダーは撮影した画像を学会へ提出した。
「こんな物を我々に見せてどうしろと言うんだね?」 「君はとうとう頭がおかしくなったのか?」
「君はまだ若いんだろう? 家に帰ってママのおっぱいでも飲んでいたらどうなんだ?」
研究者たちはただただ笑い転げるだけで誰も聞こうとはしない。
「この画像ですが、精密な分析をしたところ、彼の捏造でも光のユレギュラーでもないことがはっきりしました。 確かに特殊なシールドの中を列車が走っている画像です。」
「君たちは栄誉有る学会を愚弄する気か! 冗談にも程が有るぞ!」
「愚弄などしていませんよ。 これは真実です。」 研究者たちの嘲笑に狼狽えていたスペンダーを養護したのはジョージだった。
「我が国際惑星探査学会は君たちを追放することを決した。」
「追放?」 「まあ、いいじゃないか。 従来通りの惑星探査は学会に大いにやってもらえばいい。」
ジョージはそれから電磁空間軌道を走る特殊列車の研究を急ピッチで進めることを決断して宇宙交通開発機構を設立した。
テクノ人間の開発もまだまだだった22世紀、ジョージダニエルは空間軌道を走る列車に不思議な魅力を感じていたのだ。
それから研究は急ピッチで進められた。 「アンドロメダから来る前にこちらから挨拶しようじゃないか。」
ところが軌道安定装置と電磁ブレーキの開発がおぼつかない。 ジョージの苦悩は深かった。
「ぼくがアンドロメダに行ってデータを公開するように交渉してきます。」 駆け出しの研究者 服部義雄は単身でアンドロメダへ乗り込んで行った。
しかしデータが公開されたのは10年後のことで彼はデータを持ち帰る途中で死んでしまった。
「これはすごい。」 「どうしたんですか?」
データを解読したジョージは驚いた。 「無軌道走行システムも公開されている。 これが有ればどんな列車でも走らせられる。 すごいもんだ。」
それからしばらくして全てのデータが実行され銀河高速鉄道株式会社が操業を開始したのだった。