銀河特急777 銀河周遊編 心惑う惑星間旅行 源太郎は何を見たのか?
「本日、2235年8月25日、我々 銀河高速鉄道株式会社はここに地球アンドロメダ間の銀河高速線開通を持って操業を開始することと致しました。
これより我々は全宇宙へ路線開拓を進め、さらにその先へ未来を切り開いていく所存であります。 付きましては、、、。」
午後10時、ここ東京国際地上駅からアンドロメダへ向かう1番列車の出発セレモニーが華やかに行われた。
既に死んでいたジョージダニエルもやっと開発されたテクノ人間の第一号となって式典に参加していたのだ。
最初は銀河高速線だけだったのだが、次第に開拓が進みあらゆる銀河のあらゆる星を結ぶまでになってきた。
星団を結び、コロニー群を結び、銀河内を周遊して乗客を運んでいる。 まるで体内を駆け巡る血管網のように線路が敷かれていったのである。
銀河中央環状線も50年前に敷設されて以来、多くの客を運んでいる。
アストロライナーはそんな銀河中央環状線の周遊特級としてこれまで走ってきたのである。
「この列車は二代目なんです。 30年前に交代したんですよ。」 「じゃあ、君はその時から乗ってるんだね?」
「そうです。 この列車の食堂車で働くことが改造される条件だったので。」 「営業時間は終わってるみたいだけど大丈夫なの?」
「終わってしまえばフリーなんです。 お付き合いしますよ。」 彼女はようやくエプロンを外した。
遠くにアンドロメダ銀河が横たわっているのが見える。 その前を何本かの光の筋が飛んで行った。
「あれはアンドロメダ支社の列車です。 地球や火星にも来てるんですよ。」 「そうなんだね。 この列車は3年に一度の運行だね?」
「そうです。 アストロライナーとして走らない時には他の路線で短距離列車になります。」 「短距離?」
「そう。 通勤通学用の短距離列車です。」 彼女も熱いコーヒーを啜った。
アストロライナーとして走るのは3年に一度。 その間はm713周遊線とかガルダニア環状線とかを回っているらしい。
その時には食堂車は連結しないから車内販売が乗車している。 もちろん普通車だけの編成でね。
月に在る発射台から人工衛星が打ち上げられた。 「あれは運行システムの防護衛星です。」
「詳しいんだね。」 「乗務員には事前に知らされるんですよ。」
遥かに遠い所で何かが煌めいた。 しかしここからでは何なのか分からない。
俺は遥かに広がる闇を見詰めながらいつか沈黙してしまった。
私の体は生身に見えるけど生身じゃないのよ。 精密に計算された部品で作られてるの。
脳や神経は私が持っていた細胞をテクノ増殖させて作ったんだって。 永遠に壊れないって科学者は言ってたわね。
死にたい時に死ねないのよ。 テクノ人間だから。
エネルギーはエネルギーチャージャーから提供される超電子エネルギー。
でもね、食べることだって出来るのよ。 内臓のほとんどはテクノコーティングされてそのままに残ってるから。
ということはふつうの女の子みたいに妊娠することも出来るのかな?
この仕事を終わったら幸せな家庭を作りたい。 女の子みたいに。
「名前を窺ってもよろしいですか?」 「葛城源太郎です。」
俺は初めて彼女の手を握った。 柔らかい手だ。
「遅くまでありがとう。 また来るよ。」 「お待ちしてますね。」
食堂車を出ると暗くなった通路を歩いていく。 微かな寝息が聞こえている。
あの男もどこかで眠っているようだ。 俺は席に戻ると足元から毛布を引っ張り出してかぶって寝てしまった。
それにしてもアニーという女は何処にでも居るような女だね。 飾っても無いし見せびらかすでもない。
毎日、同じ景色ばかり見ていて飽きないのかなあ?
初めてだわ。 一人のお客さんに過ぎないのにドキッとしたのは。
この旅が最後になるかもしれないわね。
ずっと一緒に居たいかも、、、。
20世紀の人類は科学技術の驚異的な進歩を目の当たりにした。
夢でしかなかった物が次々と目の前に送り出されてくる。 コンピューターだってそうだろう。
コンピューターの発明によって月面着陸までやってのけた人間は飽きもせずに開発を続けた。
携帯電話が生まれ、家電がネットワークで繋がり、挙句の果てには惑星探査である。
そしてその関心は外宇宙にまで広がっていった。
今でも無軌道探査列車 982号と983号の永遠に終わらない探査旅行は続いている。
ただ漠然と広がっているようにしか見えない宇宙空間を人間が所狭しと走り回っている。 もちろん、そのために死んでいった人たちもたくさん居る。
だが、それらの人々が明らかにされることは無い。
国際惑星探査学会が必死になって移住可能な惑星を探していた頃、ジョージは電磁空間軌道の研究に没頭していた。
銀河高速鉄道が開業してから150年。 今では国際惑星探査学会もその陰すら見なくなってしまった。
「こちら運行管理本部。 地球火星間に障害物は無い。」 「了解。 安定走行を続けます。」
24時間、列車は止まることも無く走り続けている。 ガタンゴトン ガタンゴトン、、、。
同じリズムを刻みながら無機質なレールの上をアストロライナーは走り続けるのである。
四方八方が暗黒の闇に支配され、何一つ鼓動を感じない無限に静寂な無風の空間だと思われてきた宇宙空間を列車は走っている。 何物も遮ることが出来ない軌道の上を、、、。
空間電磁軌道が完成するまでどれほどの人間が待ち焦がれていたか、、、。 そして火を使い始めた人間がここに辿り着いたことにどれほどの人間が歓喜したことか、、、。
しかし宇宙はまだまだ奥深い闇を持った世界である。 やっとの思いで空間電磁軌道を作ってみてもそれは僅かな毛細血管が生えたにすぎないのである。
月すら人間が作ることは出来ない。 ましてや恒星やブラックホールなど、、、。
しかしだからといって悲観してばかりは居られない。 無理だからやりたくなる。
不可能だから挑戦したくなる。 それが人間なのだ。
スリーナインで旅に出た星野哲郎は無期限寿命の機械人間に憧れていた。 一方で母を殺した機械人間を恨めしいとも思っていた。
ところが時間城で機会伯爵を倒した時、彼ははっきりと決意する。 人間の命は素晴らしい物だと。
ただ生きてさえいればいいのか? そこに疑問を感じたのだろう。
その思いは機械化母星の破壊へと繋がっていく。
部品冴え交換すれば半永久的に生きられることで人間が堕落してしまう。 その危惧から彼は動いたのだ。
銀河高速線を爆走するアストロライナーと擦れ違うようにマゼラン周遊観光線の382号が走り過ぎて行った。
ここからタイタンを越え、冥王星を越えた所に太陽系分岐点が有る。
銀河高速線から各銀河へ直行する路線が無数に出ているのである。
アンドロメダへ向かう直行線、ベルトハイム銀河へ向かう周遊線、その他にも数多くの枝線が張り巡らされている。 それはまるで複雑な血管網を見ているようなものである。
アストロライナーはと言うと火星を出た後は木星の小惑星帯を潜って銀河中央環状線に入っていく。 そしてそこからさらに銀河縦断線に入り中心ブラックホールの前を横切っていく。
反対側に出てきた列車は再び銀河中央環状線に入って終着駅 アンビターナを目指すのである。
その途中には武装集団が仕切っている星域も通るし危険地帯も多い。 果たして無事に地球へ戻れるのだろうか?
これより我々は全宇宙へ路線開拓を進め、さらにその先へ未来を切り開いていく所存であります。 付きましては、、、。」
午後10時、ここ東京国際地上駅からアンドロメダへ向かう1番列車の出発セレモニーが華やかに行われた。
既に死んでいたジョージダニエルもやっと開発されたテクノ人間の第一号となって式典に参加していたのだ。
最初は銀河高速線だけだったのだが、次第に開拓が進みあらゆる銀河のあらゆる星を結ぶまでになってきた。
星団を結び、コロニー群を結び、銀河内を周遊して乗客を運んでいる。 まるで体内を駆け巡る血管網のように線路が敷かれていったのである。
銀河中央環状線も50年前に敷設されて以来、多くの客を運んでいる。
アストロライナーはそんな銀河中央環状線の周遊特級としてこれまで走ってきたのである。
「この列車は二代目なんです。 30年前に交代したんですよ。」 「じゃあ、君はその時から乗ってるんだね?」
「そうです。 この列車の食堂車で働くことが改造される条件だったので。」 「営業時間は終わってるみたいだけど大丈夫なの?」
「終わってしまえばフリーなんです。 お付き合いしますよ。」 彼女はようやくエプロンを外した。
遠くにアンドロメダ銀河が横たわっているのが見える。 その前を何本かの光の筋が飛んで行った。
「あれはアンドロメダ支社の列車です。 地球や火星にも来てるんですよ。」 「そうなんだね。 この列車は3年に一度の運行だね?」
「そうです。 アストロライナーとして走らない時には他の路線で短距離列車になります。」 「短距離?」
「そう。 通勤通学用の短距離列車です。」 彼女も熱いコーヒーを啜った。
アストロライナーとして走るのは3年に一度。 その間はm713周遊線とかガルダニア環状線とかを回っているらしい。
その時には食堂車は連結しないから車内販売が乗車している。 もちろん普通車だけの編成でね。
月に在る発射台から人工衛星が打ち上げられた。 「あれは運行システムの防護衛星です。」
「詳しいんだね。」 「乗務員には事前に知らされるんですよ。」
遥かに遠い所で何かが煌めいた。 しかしここからでは何なのか分からない。
俺は遥かに広がる闇を見詰めながらいつか沈黙してしまった。
私の体は生身に見えるけど生身じゃないのよ。 精密に計算された部品で作られてるの。
脳や神経は私が持っていた細胞をテクノ増殖させて作ったんだって。 永遠に壊れないって科学者は言ってたわね。
死にたい時に死ねないのよ。 テクノ人間だから。
エネルギーはエネルギーチャージャーから提供される超電子エネルギー。
でもね、食べることだって出来るのよ。 内臓のほとんどはテクノコーティングされてそのままに残ってるから。
ということはふつうの女の子みたいに妊娠することも出来るのかな?
この仕事を終わったら幸せな家庭を作りたい。 女の子みたいに。
「名前を窺ってもよろしいですか?」 「葛城源太郎です。」
俺は初めて彼女の手を握った。 柔らかい手だ。
「遅くまでありがとう。 また来るよ。」 「お待ちしてますね。」
食堂車を出ると暗くなった通路を歩いていく。 微かな寝息が聞こえている。
あの男もどこかで眠っているようだ。 俺は席に戻ると足元から毛布を引っ張り出してかぶって寝てしまった。
それにしてもアニーという女は何処にでも居るような女だね。 飾っても無いし見せびらかすでもない。
毎日、同じ景色ばかり見ていて飽きないのかなあ?
初めてだわ。 一人のお客さんに過ぎないのにドキッとしたのは。
この旅が最後になるかもしれないわね。
ずっと一緒に居たいかも、、、。
20世紀の人類は科学技術の驚異的な進歩を目の当たりにした。
夢でしかなかった物が次々と目の前に送り出されてくる。 コンピューターだってそうだろう。
コンピューターの発明によって月面着陸までやってのけた人間は飽きもせずに開発を続けた。
携帯電話が生まれ、家電がネットワークで繋がり、挙句の果てには惑星探査である。
そしてその関心は外宇宙にまで広がっていった。
今でも無軌道探査列車 982号と983号の永遠に終わらない探査旅行は続いている。
ただ漠然と広がっているようにしか見えない宇宙空間を人間が所狭しと走り回っている。 もちろん、そのために死んでいった人たちもたくさん居る。
だが、それらの人々が明らかにされることは無い。
国際惑星探査学会が必死になって移住可能な惑星を探していた頃、ジョージは電磁空間軌道の研究に没頭していた。
銀河高速鉄道が開業してから150年。 今では国際惑星探査学会もその陰すら見なくなってしまった。
「こちら運行管理本部。 地球火星間に障害物は無い。」 「了解。 安定走行を続けます。」
24時間、列車は止まることも無く走り続けている。 ガタンゴトン ガタンゴトン、、、。
同じリズムを刻みながら無機質なレールの上をアストロライナーは走り続けるのである。
四方八方が暗黒の闇に支配され、何一つ鼓動を感じない無限に静寂な無風の空間だと思われてきた宇宙空間を列車は走っている。 何物も遮ることが出来ない軌道の上を、、、。
空間電磁軌道が完成するまでどれほどの人間が待ち焦がれていたか、、、。 そして火を使い始めた人間がここに辿り着いたことにどれほどの人間が歓喜したことか、、、。
しかし宇宙はまだまだ奥深い闇を持った世界である。 やっとの思いで空間電磁軌道を作ってみてもそれは僅かな毛細血管が生えたにすぎないのである。
月すら人間が作ることは出来ない。 ましてや恒星やブラックホールなど、、、。
しかしだからといって悲観してばかりは居られない。 無理だからやりたくなる。
不可能だから挑戦したくなる。 それが人間なのだ。
スリーナインで旅に出た星野哲郎は無期限寿命の機械人間に憧れていた。 一方で母を殺した機械人間を恨めしいとも思っていた。
ところが時間城で機会伯爵を倒した時、彼ははっきりと決意する。 人間の命は素晴らしい物だと。
ただ生きてさえいればいいのか? そこに疑問を感じたのだろう。
その思いは機械化母星の破壊へと繋がっていく。
部品冴え交換すれば半永久的に生きられることで人間が堕落してしまう。 その危惧から彼は動いたのだ。
銀河高速線を爆走するアストロライナーと擦れ違うようにマゼラン周遊観光線の382号が走り過ぎて行った。
ここからタイタンを越え、冥王星を越えた所に太陽系分岐点が有る。
銀河高速線から各銀河へ直行する路線が無数に出ているのである。
アンドロメダへ向かう直行線、ベルトハイム銀河へ向かう周遊線、その他にも数多くの枝線が張り巡らされている。 それはまるで複雑な血管網を見ているようなものである。
アストロライナーはと言うと火星を出た後は木星の小惑星帯を潜って銀河中央環状線に入っていく。 そしてそこからさらに銀河縦断線に入り中心ブラックホールの前を横切っていく。
反対側に出てきた列車は再び銀河中央環状線に入って終着駅 アンビターナを目指すのである。
その途中には武装集団が仕切っている星域も通るし危険地帯も多い。 果たして無事に地球へ戻れるのだろうか?
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