婚約破棄された者同士、円満に契約結婚いたしましょう。

13.兄弟について

「既にお聞きしていましたが、ラルード様も下に兄弟がいたのですね」
「ええ、そうなんですよ」

 客室に来た私は、ラルード様とお茶していた。
 議題になったのは、弟と妹のことである。私もラルード様も、下に兄弟がいるという共通点があるのだ。

「アノテラさんの弟さんと妹さんは、双子でしたよね?」
「はい、そうなんです。私とは随分と年が離れていますけど……」
「確かにそうですね。結構、年齢差があるみたいで……」
「私から長らく子宝に恵まれなかったんです。父と母にとっては、念願の後継ぎでもありましたし、二人が生まれた時はそれはもうすごい喜びようでした。玉のように可愛がっていますよ」

 私の弟であるイグルと妹のウェレナは、父と母にとってやっとの思いで生まれた子達だった。
 そのため、二人はかなり愛されている。跡継ぎのイグルはもちろん、ウェレナも両親にとっては同じくらい愛おしい存在であるらしい。
 もちろん、私にとっても可愛い弟と妹である。少し生意気な所もあるけれど、そういう所も含めて愛おしい存在だ。

「……もしかして、アノテラさんとしては少々複雑ですか? 疎外感などを覚えたりとか……」
「え? ああ、いえ、そういうことは全然ないんです。まあ、年が離れているからか、特に不和もなかったんでしょうね?」

 可愛がられる下の子に嫉妬するという話は、よくあるものだ。
 しかし、私はそんなことは思わなかった。既に両親に構ってもらいたいと思うような年では、なかったことがその要因なのかもしれない。

「そうですか……いや、実は家は色々とありましてね」
「あ、そうなんですか?」
「ええ、妹ができた時に……初めての女の子だったからなのか、父がそれはもう入れ込んで。僕も弟も……特に弟の方が」
「なるほど、まあ、ラルード様の方は年が近いですからね……」

 ラルード様は、昔を懐かしむような目をしていた。
 先程見たからわかっているが、エンティリア伯爵家には不和はない。つまり、それらの色々と乗り越えてきたということなのだろう。
 その家族の仲に、私はこれから入ることになる。上手くやっているかが、少々心配だ。

「まあ、僕にとっては二人とも大切な弟と妹です……きっと、アノテラさんも二人とは仲良くなれると思いますよ」
「そ、そうでしょうか?」
「ええ、雰囲気の話ですから、曖昧になってしまいますがきっと大丈夫です」

 私の心の憂いを見抜いたのか、ラルード様はそのような言葉をかけてくれた。
 そのおかげで、少し安心できた。本当にラルード様は、優しい人だ。
< 13 / 34 >

この作品をシェア

pagetop