婚約破棄された者同士、円満に契約結婚いたしましょう。
19.大胆な選択(モブ視点)
ガラルトとロナメアは、お互いの父の態度に辟易としていた。
彼らは、二人の婚約についてあれこれ口出しをしてくる。ガラルトに関しては、破談まで話に出たくらいだ。
「もちろん、家を取り仕切っているのは父上だ。しかしながら、今回の父上は横暴としか言いようがない。僕がこれ程良き縁談を持ってきたというのに、それを突っぱねようとするなんて信じられない愚行だよ」
「私のお父様も同じです。あれこれと指示を出してきて……私は純粋にガラルト様を愛しているというのに、これでは不純です」
二人は、お互いの不満を打ち明け合っていた。
そうやって日頃の愚痴を述べるのは、まだ二人が以前の婚約者と婚約していた時からの習わしのようなものだった。
他の人には言えないことを言う。二人にとって、その行為は特別なものだったのだ。
「……ロナメア、もうこんな家は見捨てないか?」
「え?」
「僕達にとって重要なのは、僕達の幸せであるだろう? 僕達が二人でいる。それ以上に重要なことなどあるだろうか」
「……ええ、それはもちろんその通りです。私達にとっての幸せは、隣に愛する人がいるかどうかということだけです」
「それなら、二人で出て行かないか? どこか遠くに行って、二人でのどかに暮らすんだ」
ガラルトの突拍子のない計画に、ロナメアは乗り気であった。
駆け落ちする。その言葉に二人は酔っていたのだ。それがどれ程険しい道であるかなんて、二人は考えてもいなかった。
「そうだ。山の上なんてどうだろうか? 自然に囲まれて、自給自足で生活するんだ。とても心地いい生活になると思わないか?」
「それはいいですね。賛成です」
高慢な貴族として生きてきた二人は、民がどのように生きているかなんてまったく気にかけたことがなかった。
夢として語るその生活が、苦労の上に成り立つものであるなどとはわかっていなかったのだ。
だが、二人は止まらなかった。駆け落ちという理想の生活に、二人はどんどんと憧れていく。
「よし、それなら出発はいつにしようか?」
「早い方がいいでしょう。悟られないように、出かけるのは夜がいいかと……」
「なるほど、それなら今晩早速出て行くとしようか」
二人は、いとも簡単に駆け落ちすることを決めてしまった。
次期当主であったはずのガラルトは、最早ザルパード子爵家の未来など忘れていた。彼の頭の中には、理想の生活に対する憧れしかなくなっていたのだ。
それは、ロナメアも同じである。父親という障害、二人はそれによって想いを燃え上がらせて、極端な行動へと身を預けていくのだった。
彼らは、二人の婚約についてあれこれ口出しをしてくる。ガラルトに関しては、破談まで話に出たくらいだ。
「もちろん、家を取り仕切っているのは父上だ。しかしながら、今回の父上は横暴としか言いようがない。僕がこれ程良き縁談を持ってきたというのに、それを突っぱねようとするなんて信じられない愚行だよ」
「私のお父様も同じです。あれこれと指示を出してきて……私は純粋にガラルト様を愛しているというのに、これでは不純です」
二人は、お互いの不満を打ち明け合っていた。
そうやって日頃の愚痴を述べるのは、まだ二人が以前の婚約者と婚約していた時からの習わしのようなものだった。
他の人には言えないことを言う。二人にとって、その行為は特別なものだったのだ。
「……ロナメア、もうこんな家は見捨てないか?」
「え?」
「僕達にとって重要なのは、僕達の幸せであるだろう? 僕達が二人でいる。それ以上に重要なことなどあるだろうか」
「……ええ、それはもちろんその通りです。私達にとっての幸せは、隣に愛する人がいるかどうかということだけです」
「それなら、二人で出て行かないか? どこか遠くに行って、二人でのどかに暮らすんだ」
ガラルトの突拍子のない計画に、ロナメアは乗り気であった。
駆け落ちする。その言葉に二人は酔っていたのだ。それがどれ程険しい道であるかなんて、二人は考えてもいなかった。
「そうだ。山の上なんてどうだろうか? 自然に囲まれて、自給自足で生活するんだ。とても心地いい生活になると思わないか?」
「それはいいですね。賛成です」
高慢な貴族として生きてきた二人は、民がどのように生きているかなんてまったく気にかけたことがなかった。
夢として語るその生活が、苦労の上に成り立つものであるなどとはわかっていなかったのだ。
だが、二人は止まらなかった。駆け落ちという理想の生活に、二人はどんどんと憧れていく。
「よし、それなら出発はいつにしようか?」
「早い方がいいでしょう。悟られないように、出かけるのは夜がいいかと……」
「なるほど、それなら今晩早速出て行くとしようか」
二人は、いとも簡単に駆け落ちすることを決めてしまった。
次期当主であったはずのガラルトは、最早ザルパード子爵家の未来など忘れていた。彼の頭の中には、理想の生活に対する憧れしかなくなっていたのだ。
それは、ロナメアも同じである。父親という障害、二人はそれによって想いを燃え上がらせて、極端な行動へと身を預けていくのだった。