婚約破棄された者同士、円満に契約結婚いたしましょう。
2.二人同時に
「さて、何から話すべきだろうか。いや、回りくどいのは良くないか。単刀直入に言おう」
「ええ、そうしましょうか。回りくどいのは、お二人に失礼ですもの」
ガラルト様とロナメア嬢は、見つめ合いながらそのような会話をしていた。
既に回りくどいのだが、二人はそのようなことは気にしていない。どうやら二人の世界に入っているようだ。
そんな様子に、私は隣にいるラルード様と顔を見合わせた。彼も同じ意見であるようだ。
「ガラルト殿、用件を早く話していただけないでしょうか?」
「おっと、ラルード伯爵令息、申し訳ない。ただ、あなたに用があるのはロナメアの方です。私が用があるのは、あくまでアノテラ、君だ」
「ええ、そうなのでしょうね」
ラルード様の言葉によって、ガラルト様の視線がこちらに向いた。
それと同時に、ロナメア嬢の視線がラルード様に向く。二人はそれぞれの婚約者に、何か言いたいことがあるようだ。その内容は、正直大体予想できる。
「アノテラ、僕は君と婚約破棄したいと思っている」
「ラルード様、私はあなたと婚約破棄したいと思っています」
二人は、示し合わせたように同じような言葉を発した。
その内容に、特に驚きはない。これまでの二人の様子から、そういった類の話であることは容易に予想できていたのだ。
「えっと、それはつまり二人が?」
「ああ、ばれていたか。実の所、僕とロナメアは相思相愛なのだ」
「相思相愛ですか……」
「お二人には申し訳ないと思ったのですけれどね。でも、やっぱりこの想いを秘めたままにしておくことはできそうにないのです」
ロナメア嬢は、愛おしそうにガラルト様の方を見る。すると、それに応えるように、ガラルト様が笑った。
まるで私達がいないかのように、二人は熱っぽい視線を向け合っている。このまま口づけでもするのではないかという勢いだ。
二人が懇意にしているということは、非常によくわかった。なんというか、彼らの間に誰かが入り込む余地はなさそうだ。
「アノテラ嬢、どうやら我々はお二人にとって邪魔ものであるようだ」
「ええ、そのようですね……」
ラルード様の言葉に、私はゆっくりと頷いた。
彼の言う通り、これ以上ここにいても無駄だろう。この二人に何を言ったって、婚約破棄は覆らないはずだ。
そもそも、覆すやる気も出ない。別にガラルト様に好感を抱いている訳でもないし、もうささっと帰らせてもらおう。
「おや、もう行くのかい?」
「見送りは結構です」
「ロナメア嬢、こちらも同じです」
「そうですか? わかりました。ラルード様、お元気で……」
それだけ伝えて、私とラルード様は客室から出た。
そんな私達の後ろからは、親しげな男女の声が聞こえてくるのだった。
「ええ、そうしましょうか。回りくどいのは、お二人に失礼ですもの」
ガラルト様とロナメア嬢は、見つめ合いながらそのような会話をしていた。
既に回りくどいのだが、二人はそのようなことは気にしていない。どうやら二人の世界に入っているようだ。
そんな様子に、私は隣にいるラルード様と顔を見合わせた。彼も同じ意見であるようだ。
「ガラルト殿、用件を早く話していただけないでしょうか?」
「おっと、ラルード伯爵令息、申し訳ない。ただ、あなたに用があるのはロナメアの方です。私が用があるのは、あくまでアノテラ、君だ」
「ええ、そうなのでしょうね」
ラルード様の言葉によって、ガラルト様の視線がこちらに向いた。
それと同時に、ロナメア嬢の視線がラルード様に向く。二人はそれぞれの婚約者に、何か言いたいことがあるようだ。その内容は、正直大体予想できる。
「アノテラ、僕は君と婚約破棄したいと思っている」
「ラルード様、私はあなたと婚約破棄したいと思っています」
二人は、示し合わせたように同じような言葉を発した。
その内容に、特に驚きはない。これまでの二人の様子から、そういった類の話であることは容易に予想できていたのだ。
「えっと、それはつまり二人が?」
「ああ、ばれていたか。実の所、僕とロナメアは相思相愛なのだ」
「相思相愛ですか……」
「お二人には申し訳ないと思ったのですけれどね。でも、やっぱりこの想いを秘めたままにしておくことはできそうにないのです」
ロナメア嬢は、愛おしそうにガラルト様の方を見る。すると、それに応えるように、ガラルト様が笑った。
まるで私達がいないかのように、二人は熱っぽい視線を向け合っている。このまま口づけでもするのではないかという勢いだ。
二人が懇意にしているということは、非常によくわかった。なんというか、彼らの間に誰かが入り込む余地はなさそうだ。
「アノテラ嬢、どうやら我々はお二人にとって邪魔ものであるようだ」
「ええ、そのようですね……」
ラルード様の言葉に、私はゆっくりと頷いた。
彼の言う通り、これ以上ここにいても無駄だろう。この二人に何を言ったって、婚約破棄は覆らないはずだ。
そもそも、覆すやる気も出ない。別にガラルト様に好感を抱いている訳でもないし、もうささっと帰らせてもらおう。
「おや、もう行くのかい?」
「見送りは結構です」
「ロナメア嬢、こちらも同じです」
「そうですか? わかりました。ラルード様、お元気で……」
それだけ伝えて、私とラルード様は客室から出た。
そんな私達の後ろからは、親しげな男女の声が聞こえてくるのだった。