婚約破棄された者同士、円満に契約結婚いたしましょう。
27.双子の涙
「二人とも、どうかしたの?」
表情を変えた弟と妹に対して、私は困惑しながらも優しく声をかけた。
二人の表情の意味が、よくわからない。確かに私は厳しいことを言ったような気もするが、家のことを任せると言って、ここまで絶望的な顔をするのは変だ。
「お姉様……」
「行かないでください……」
「え?」
「僕達、嫌なんです」
「お姉様が出て行くのが嫌なんです……」
「あなた達……」
二人の頬から涙が流れていくのを見て、私はやっと弟と妹が何に苦しんでいるのかを理解した。
私が家からいなくなる。それは二人にとって、私が思っていた以上に嫌なことであったらしい。
それは私にとって、とても意外なことだった。なんというか、突然殴られたような気分だ。私の心は、大きく揺らいでいる。
「そう……だったのね」
やっとのことで振り絞れたのは、そんな力のない一言だけだった。
私は、姉として失格である。二人がこんなにも苦しんでいたのに気付いてあげられなかったのは、失態としか言いようがない。
そんな私に、何ができるのだろうか。それを必死で考える。とにかく今は、この二人の弟と妹の不安を少しでも拭ってあげたかった。
「ごめんなさい。私は行かなければならないの。それが私が生まれた時からの役目だから……」
「でも……」
「私も、あなた達やお父様やお母様から離れるのは寂しいわ。でも別に、二度と会えなくなる訳じゃないの。会おうと思えば、いつだって会えるし……それに心は繋がっている」
「心?」
私は、イグルとウェレナをゆっくりと抱き寄せた。
まだ小さな双子は、私の胸の中で泣きながら言葉を返してくれる。この二人も、必死で納得しようとしているのだろう。それが伝わってきた。
二人が、ここまで私のことを想ってくれていたというのは正直意外でもある。
いつもやんちゃで、時々私のことを蔑ろにしたりするので、私が出て行くことにも呆気からんとしていると思っていた。
でもそれはきっと、私が表面しか見られていなかったということなのだろう。考えてみれば、私だってそうだ。二人に抱いている愛情を、全て包み隠さず表に出せられている訳ではない。
「私とイグルとウェレナは、離れていても兄弟なのよ。それは絶対に変わらないことなの。その絆がある限り、私達は繋がっている。だからきっと大丈夫……」
「……お姉様」
「お姉様……」
そこで私は、自分の非力さを痛感していた。
どれだけ論を述べても、この二人を本当に安心させることができないと思ったからだ。
行かない。あなた達の傍にいる。そう言えたらどれだけ良かっただろうか。
だがそれを口にすることは決してできないため、私はただ二人を強く抱きしめることしかできなかった。
表情を変えた弟と妹に対して、私は困惑しながらも優しく声をかけた。
二人の表情の意味が、よくわからない。確かに私は厳しいことを言ったような気もするが、家のことを任せると言って、ここまで絶望的な顔をするのは変だ。
「お姉様……」
「行かないでください……」
「え?」
「僕達、嫌なんです」
「お姉様が出て行くのが嫌なんです……」
「あなた達……」
二人の頬から涙が流れていくのを見て、私はやっと弟と妹が何に苦しんでいるのかを理解した。
私が家からいなくなる。それは二人にとって、私が思っていた以上に嫌なことであったらしい。
それは私にとって、とても意外なことだった。なんというか、突然殴られたような気分だ。私の心は、大きく揺らいでいる。
「そう……だったのね」
やっとのことで振り絞れたのは、そんな力のない一言だけだった。
私は、姉として失格である。二人がこんなにも苦しんでいたのに気付いてあげられなかったのは、失態としか言いようがない。
そんな私に、何ができるのだろうか。それを必死で考える。とにかく今は、この二人の弟と妹の不安を少しでも拭ってあげたかった。
「ごめんなさい。私は行かなければならないの。それが私が生まれた時からの役目だから……」
「でも……」
「私も、あなた達やお父様やお母様から離れるのは寂しいわ。でも別に、二度と会えなくなる訳じゃないの。会おうと思えば、いつだって会えるし……それに心は繋がっている」
「心?」
私は、イグルとウェレナをゆっくりと抱き寄せた。
まだ小さな双子は、私の胸の中で泣きながら言葉を返してくれる。この二人も、必死で納得しようとしているのだろう。それが伝わってきた。
二人が、ここまで私のことを想ってくれていたというのは正直意外でもある。
いつもやんちゃで、時々私のことを蔑ろにしたりするので、私が出て行くことにも呆気からんとしていると思っていた。
でもそれはきっと、私が表面しか見られていなかったということなのだろう。考えてみれば、私だってそうだ。二人に抱いている愛情を、全て包み隠さず表に出せられている訳ではない。
「私とイグルとウェレナは、離れていても兄弟なのよ。それは絶対に変わらないことなの。その絆がある限り、私達は繋がっている。だからきっと大丈夫……」
「……お姉様」
「お姉様……」
そこで私は、自分の非力さを痛感していた。
どれだけ論を述べても、この二人を本当に安心させることができないと思ったからだ。
行かない。あなた達の傍にいる。そう言えたらどれだけ良かっただろうか。
だがそれを口にすることは決してできないため、私はただ二人を強く抱きしめることしかできなかった。