婚約破棄された者同士、円満に契約結婚いたしましょう。
3.それぞれの相手
「……アノテラ嬢、あなたも災難でしたね」
「……ええ、ラルード様こそ」
客室から出た私は、ラルード様とそのような会話を交わした。
奇妙な感覚である。彼とは今日初めて出会ったばかりなのに、既に分かり合えているような気がしてしまう。
「しかし事前にある程度ことが予想できた僕と違って、あなたは予想外の方向から婚約破棄を食らった訳でしょう?」
「ラルード様は、やはり何が起こるか予想できていたのですね? まあ、婚約者から別の家に呼ばれたらそうなりますか?」
「ええ、それもロナメア嬢は僕にわざわざガラルト様のザルパード子爵家と言ってきましたからね……」
「ええ……」
ロナメア嬢の言動に、私は驚いてしまった。
そんな言い方をすれば、他に男がいると言っているようなものだ。
しかしそれはなんというか、非常に納得できるものだった。先程までの彼女を考えると、そんなことも言い出しそうなのである。
「しかしながら、相手にも婚約者がいるとは思っていませんでした」
「ああ、そうだったんですか」
「前々から、彼女が怪しいとは思っていたんですけれどね……アノテラ嬢はどうでしたか?」
「え? えっと……いいえ、特に怪しいとは思いませんでした」
ラルード様の口振り的に、あの二人は結構前から関係を持っていたようだ。
しかし、私はまったく気付いていなかった。というか、ガラルト様と何を話したか、正直あまり覚えていない。
「正直な所、ガラルト様は中々に難儀な人でして……その、話がすごく長いんです」
「話が長い?」
「だから、一々会話を覚えていないというか……聞き流さないとやってられなかったんです」
ガラルト様は、非常にプライドが高い人で、いつも自慢話をしていた。
そんな彼との会話は、基本的にいつも聞き流していた。精神衛生上、その方が良かったのだ。
故に、私はガラルト様の変化などは知らない。いや、もしかしたら彼が隠すのが上手いだけだったのかもしれないが。
「そうですか。それは少し不思議ですね」
「不思議? 何がですか?」
「いえ、ここだけの話、ロナメア嬢も中々にこだわりが強い方なのです。そんな彼女が、彼と上手くやっているのが少し不思議で……」
「そうなんですか……まあ、人と人との相性なんてわかりませんからね」
「……確かにそうですね」
ガラルト様とロナメア嬢は、とても親しそうにしていた。きっと、二人にしかわからない何かがあるのだろう。恋愛とはそういうものである気もするし、私達があれこれ予想しても無駄なような気がする。
というか、二人のことなんて考えている場合ではないだろう。私もラルード様も、自分達のことを考えなければならないのだ。
「……ええ、ラルード様こそ」
客室から出た私は、ラルード様とそのような会話を交わした。
奇妙な感覚である。彼とは今日初めて出会ったばかりなのに、既に分かり合えているような気がしてしまう。
「しかし事前にある程度ことが予想できた僕と違って、あなたは予想外の方向から婚約破棄を食らった訳でしょう?」
「ラルード様は、やはり何が起こるか予想できていたのですね? まあ、婚約者から別の家に呼ばれたらそうなりますか?」
「ええ、それもロナメア嬢は僕にわざわざガラルト様のザルパード子爵家と言ってきましたからね……」
「ええ……」
ロナメア嬢の言動に、私は驚いてしまった。
そんな言い方をすれば、他に男がいると言っているようなものだ。
しかしそれはなんというか、非常に納得できるものだった。先程までの彼女を考えると、そんなことも言い出しそうなのである。
「しかしながら、相手にも婚約者がいるとは思っていませんでした」
「ああ、そうだったんですか」
「前々から、彼女が怪しいとは思っていたんですけれどね……アノテラ嬢はどうでしたか?」
「え? えっと……いいえ、特に怪しいとは思いませんでした」
ラルード様の口振り的に、あの二人は結構前から関係を持っていたようだ。
しかし、私はまったく気付いていなかった。というか、ガラルト様と何を話したか、正直あまり覚えていない。
「正直な所、ガラルト様は中々に難儀な人でして……その、話がすごく長いんです」
「話が長い?」
「だから、一々会話を覚えていないというか……聞き流さないとやってられなかったんです」
ガラルト様は、非常にプライドが高い人で、いつも自慢話をしていた。
そんな彼との会話は、基本的にいつも聞き流していた。精神衛生上、その方が良かったのだ。
故に、私はガラルト様の変化などは知らない。いや、もしかしたら彼が隠すのが上手いだけだったのかもしれないが。
「そうですか。それは少し不思議ですね」
「不思議? 何がですか?」
「いえ、ここだけの話、ロナメア嬢も中々にこだわりが強い方なのです。そんな彼女が、彼と上手くやっているのが少し不思議で……」
「そうなんですか……まあ、人と人との相性なんてわかりませんからね」
「……確かにそうですね」
ガラルト様とロナメア嬢は、とても親しそうにしていた。きっと、二人にしかわからない何かがあるのだろう。恋愛とはそういうものである気もするし、私達があれこれ予想しても無駄なような気がする。
というか、二人のことなんて考えている場合ではないだろう。私もラルード様も、自分達のことを考えなければならないのだ。