婚約破棄された者同士、円満に契約結婚いたしましょう。
30.余計な帰還(モブ視点)
「さて……ロナメア嬢、あなたにも話がある人がいます」
「え? 私に……」
「ええ……どうぞ、次はあなたの番です」
ガラルトとの話が終わって、ザルパード子爵はロナメアに矛先を向けた。
それと同時に表れた人物に、彼女は目を丸める。そこには確かに、ロナメアの父セントラス伯爵がいたのだ。
「ロナメアよ。今日お前が帰ってきたことは、実にタイミングがよかったといえる。ザルパード子爵との話も終わり、丁度お前達の処遇を決定した所だ」
「ど、どういうことですか?」
「まず私は、お前と縁を切ろうと思っていた。お前のような身勝手な者は、セントラス伯爵家にとって何の利益にもならないからだ」
セントラス伯爵は、特に表情を変えることもなくロナメアにそう言い切った。
父親がどういう人物であるか、彼女もある程度はわかっている。しかしながら、自分をそこまで簡単に切れるとは思っていなかったため、彼女は動揺していた。
「しかしながら、ザルパード子爵はお前達が必ず戻って来ると言ってきた。驚くべきことであるが、それは本当だった。だが、我々にとってそれは余計なことだったのだ」
「な、なんですって?」
「駆け落ちして、どこかに消えてくれた方が私達にとって都合が良いのだ。戻って来られても、正直困る。お前達は扱いにくいのだ」
「そ、そんな……」
セントラス伯爵は、ザルパード子爵の方を見る。すると子爵は、ゆっくりと頷いた。
それは二人にとって、最終確認の合図であった。故に伯爵は、話を再開する。
「お前達には、これから失踪してもらう。駆け落ちして、どこかで二人で暮らしている。そういうことにしておきたいからだ」
「し、失踪って………」
「もちろん、私にも人並みの情というものは存在する。故にお前達が暮らせる場所と生活費は工面してやろう。それで私とザルパード子爵は同意した。我々の寛大な措置に感謝するのだな? 特に、ザルパード子爵は慈悲深かった」
セントラス伯爵は、そこで笑った。
それは暗に、自分は慈悲深くなかったということを表している。
故にロナメアは理解した。父親がいざとなったら、自分達を始末することも辞さないのだと。
伯爵に親としての情がない訳ではない。ただ、ロナメアは知っていたのだ。彼は大義と思うことのためならば、手段は選ばない人なのだということを。
「ガ、ガラルト様、ここは従いましょう」
「なっ……こ、こんな不当な扱いに従うつもりなのか?」
「いいから、従ってください! あなただって、命は惜しいでしょう!」
「い、命だって……」
何もわかっていなかったガラルトに、ロナメアは必死で叫んだ。
こうして二人は、駆け落ちして失踪することになった。両家にとって円滑にことを進めるために、二人は消えることになったのである。
「え? 私に……」
「ええ……どうぞ、次はあなたの番です」
ガラルトとの話が終わって、ザルパード子爵はロナメアに矛先を向けた。
それと同時に表れた人物に、彼女は目を丸める。そこには確かに、ロナメアの父セントラス伯爵がいたのだ。
「ロナメアよ。今日お前が帰ってきたことは、実にタイミングがよかったといえる。ザルパード子爵との話も終わり、丁度お前達の処遇を決定した所だ」
「ど、どういうことですか?」
「まず私は、お前と縁を切ろうと思っていた。お前のような身勝手な者は、セントラス伯爵家にとって何の利益にもならないからだ」
セントラス伯爵は、特に表情を変えることもなくロナメアにそう言い切った。
父親がどういう人物であるか、彼女もある程度はわかっている。しかしながら、自分をそこまで簡単に切れるとは思っていなかったため、彼女は動揺していた。
「しかしながら、ザルパード子爵はお前達が必ず戻って来ると言ってきた。驚くべきことであるが、それは本当だった。だが、我々にとってそれは余計なことだったのだ」
「な、なんですって?」
「駆け落ちして、どこかに消えてくれた方が私達にとって都合が良いのだ。戻って来られても、正直困る。お前達は扱いにくいのだ」
「そ、そんな……」
セントラス伯爵は、ザルパード子爵の方を見る。すると子爵は、ゆっくりと頷いた。
それは二人にとって、最終確認の合図であった。故に伯爵は、話を再開する。
「お前達には、これから失踪してもらう。駆け落ちして、どこかで二人で暮らしている。そういうことにしておきたいからだ」
「し、失踪って………」
「もちろん、私にも人並みの情というものは存在する。故にお前達が暮らせる場所と生活費は工面してやろう。それで私とザルパード子爵は同意した。我々の寛大な措置に感謝するのだな? 特に、ザルパード子爵は慈悲深かった」
セントラス伯爵は、そこで笑った。
それは暗に、自分は慈悲深くなかったということを表している。
故にロナメアは理解した。父親がいざとなったら、自分達を始末することも辞さないのだと。
伯爵に親としての情がない訳ではない。ただ、ロナメアは知っていたのだ。彼は大義と思うことのためならば、手段は選ばない人なのだということを。
「ガ、ガラルト様、ここは従いましょう」
「なっ……こ、こんな不当な扱いに従うつもりなのか?」
「いいから、従ってください! あなただって、命は惜しいでしょう!」
「い、命だって……」
何もわかっていなかったガラルトに、ロナメアは必死で叫んだ。
こうして二人は、駆け落ちして失踪することになった。両家にとって円滑にことを進めるために、二人は消えることになったのである。