婚約破棄された者同士、円満に契約結婚いたしましょう。
31.寛大な人
素直な気持ちを伝えられてから、私はイグルとウェレナと過ごす時間を増やしていた。
幸いにも、正式な結婚まではまだ時間がある。それまでの間、私は双子や両親との交流をこれまで以上に深めておくつもりだ。
そうやって思い出を積み重ねておくことで、別れに備えることができる。そう思うようになったからだ。
「別れ、ですか……」
「ええ、そうなんです。思っていた以上に、二人は辛かったみたいで……」
「……なるほど、そうですよね。まだ二人は、幼い訳ですし」
「でも、分別がわからない年という訳でもないので、ため込んでしまったのでしょうね……」
私はそれらのことを、ラルード様に伝えていた。
彼に言わない方がいいかとも思ったが、イグルとウェレナがラルード様に鋭い視線を向けていたのを見て、事情を伝えておくべきだと結論付けた。
その判断は、恐らく間違っていないだろう。ラルード様も、納得してくれているようだ。
「その、ラルード様は二人からかなり厳しい視線を向けられていると思いますが……」
「構いませんよ。二人から見れば、僕はあなたを奪う悪者だ」
「二人だって本当はわかっているはずなんです。これはラルード様の問題ではないと……」
「大丈夫です。別に怒ったりしませんよ。むしろ、二人のことを好ましく思います」
「好ましく?」
ラルード様の言葉に、私は少し驚いた。
勝手な恨みを向けられているというのに、それを好ましく思うとは意外だ。反骨の精神が、豹かできるとかなのだろうか。
「お二人が、それだけあなたのことを大切に思っているということでしょう?」
「それは……まあ、そうですね」
「家族を思う気持ちというのは、素晴らしいものだと僕は思っています。二人はきっと、良き大人になりますよ」
ラルード様は、かなり余裕を持っていた。そんな彼こそが、正に良き大人といえるだろう。
そういう人の元に嫁げるという幸福を、私は改めて感じていた。お父様やお母様も言っていたが、この婚約は本当に幸運だったとしか言いようがない。
「ラルード様が、寛大な方で本当に良かったと思います」
「大袈裟ですよ。これで怒る方がおかしいと僕は思います」
「そう思えることが、寛大なのですよ」
貴族というものは、寛大であるべきだとつくづく思う。
高い地位を持っているからこそ、余裕を持つべきなのだ。地位に溺れて高慢でいると、きっといつか痛い目を見る。
貴族であるからこそ、謙虚に生きよう。私は密かにそう誓うのだった。
幸いにも、正式な結婚まではまだ時間がある。それまでの間、私は双子や両親との交流をこれまで以上に深めておくつもりだ。
そうやって思い出を積み重ねておくことで、別れに備えることができる。そう思うようになったからだ。
「別れ、ですか……」
「ええ、そうなんです。思っていた以上に、二人は辛かったみたいで……」
「……なるほど、そうですよね。まだ二人は、幼い訳ですし」
「でも、分別がわからない年という訳でもないので、ため込んでしまったのでしょうね……」
私はそれらのことを、ラルード様に伝えていた。
彼に言わない方がいいかとも思ったが、イグルとウェレナがラルード様に鋭い視線を向けていたのを見て、事情を伝えておくべきだと結論付けた。
その判断は、恐らく間違っていないだろう。ラルード様も、納得してくれているようだ。
「その、ラルード様は二人からかなり厳しい視線を向けられていると思いますが……」
「構いませんよ。二人から見れば、僕はあなたを奪う悪者だ」
「二人だって本当はわかっているはずなんです。これはラルード様の問題ではないと……」
「大丈夫です。別に怒ったりしませんよ。むしろ、二人のことを好ましく思います」
「好ましく?」
ラルード様の言葉に、私は少し驚いた。
勝手な恨みを向けられているというのに、それを好ましく思うとは意外だ。反骨の精神が、豹かできるとかなのだろうか。
「お二人が、それだけあなたのことを大切に思っているということでしょう?」
「それは……まあ、そうですね」
「家族を思う気持ちというのは、素晴らしいものだと僕は思っています。二人はきっと、良き大人になりますよ」
ラルード様は、かなり余裕を持っていた。そんな彼こそが、正に良き大人といえるだろう。
そういう人の元に嫁げるという幸福を、私は改めて感じていた。お父様やお母様も言っていたが、この婚約は本当に幸運だったとしか言いようがない。
「ラルード様が、寛大な方で本当に良かったと思います」
「大袈裟ですよ。これで怒る方がおかしいと僕は思います」
「そう思えることが、寛大なのですよ」
貴族というものは、寛大であるべきだとつくづく思う。
高い地位を持っているからこそ、余裕を持つべきなのだ。地位に溺れて高慢でいると、きっといつか痛い目を見る。
貴族であるからこそ、謙虚に生きよう。私は密かにそう誓うのだった。