婚約破棄された者同士、円満に契約結婚いたしましょう。
4.何気ない提案
「ラルード様は、これからどうされるんですか?」
「どうされる、とは?」
「婚約破棄されてしまったでしょう?」
「ああ、そのことですか……」
そこで私は、参考までにラルード様のことを聞いてみることにした。
正直、これからお互いに大変だと思う。婚約というものは、一朝一夕でできるものではない。これまで積み重なってきたものが崩れたという事実は、結構重大だ。
「どうするべきかは、色々と考えています。ただ、今回の婚約がなくなってしまったという事実は大きいですね。エンティリア伯爵家にとって大きな損失です。もっとも、それは向こうも同じであると思いますが……」
「今回の件は、多分あの二人の独断ですよね?」
「そうなのではないでしょうか。そうでなければ、家の方から話を通すでしょうし……」
やはりラルード様の方も大変そうである。この急な婚約破棄には、それ程の威力があるのだ。
それは、向こうの家にとってもそのはずである。いやガラルト様のザルパード子爵家にとっては、伯爵家との縁ができたことは嬉しいことなのだろうか。
「次の婚約者が、早急に見つかってくれるといいのですがね……なんというか、今回の件で僕の心証というものもなんとなく落ちるでしょう?」
「ああ、そうですね。こちらが被害者であっても、あらぬ噂が流れますから……」
「ままならないものですね」
婚約破棄されたということは、私達にとって結構不利な要素であった。
例えば、こちらに問題があったから婚約破棄されたのではないかと疑われたりするかもしれない。実際にそういう噂を聞いたこともあるし、本当に辛い状況である。
「どこかに誰かいい人がいればいいんですけどね……」
「……もしもよろしかったら」
「はい?」
「もしもよろしかったら、私なんてどうですか?」
悩むラルード様に、私はふとそんなことを言ってみた。
それは冗談半分の交渉である。私にとって、相手は伯爵家の令息だ。その縁談を持って帰ることができれば、大きな収穫である。駄目元でも聞いてみる価値があると思ったのである。
「……なるほど、それはいいかもしれませんね」
「え?」
そんな私に、ラルード様は予想外の返答を返してきた。
思わず私は、変な声を出してしまう。好意的な言葉が返ってくるなんて、まったく思っていなかったからである。
「僕達は、同じ傷を負った者同士です。なんというか、上手くやっていけると思いませんか?」
「そ、それはそうですけど……私は、子爵家の令嬢ですよ」
「別に構いませんよ。父と母も文句は言わないでしょう。こんな状況ですから、いい相手が見つかったと喜んでくれるかもしれません」
「そ、そうですか……」
ラルード様は、私以上にこの縁談に乗り気だった。
そんな彼を見て、私は困惑してしまう。騙されたりしていないだろうか。
そんな風な不安を胸に、私はラルード様との縁談を持ち帰ることになったのだった。
「どうされる、とは?」
「婚約破棄されてしまったでしょう?」
「ああ、そのことですか……」
そこで私は、参考までにラルード様のことを聞いてみることにした。
正直、これからお互いに大変だと思う。婚約というものは、一朝一夕でできるものではない。これまで積み重なってきたものが崩れたという事実は、結構重大だ。
「どうするべきかは、色々と考えています。ただ、今回の婚約がなくなってしまったという事実は大きいですね。エンティリア伯爵家にとって大きな損失です。もっとも、それは向こうも同じであると思いますが……」
「今回の件は、多分あの二人の独断ですよね?」
「そうなのではないでしょうか。そうでなければ、家の方から話を通すでしょうし……」
やはりラルード様の方も大変そうである。この急な婚約破棄には、それ程の威力があるのだ。
それは、向こうの家にとってもそのはずである。いやガラルト様のザルパード子爵家にとっては、伯爵家との縁ができたことは嬉しいことなのだろうか。
「次の婚約者が、早急に見つかってくれるといいのですがね……なんというか、今回の件で僕の心証というものもなんとなく落ちるでしょう?」
「ああ、そうですね。こちらが被害者であっても、あらぬ噂が流れますから……」
「ままならないものですね」
婚約破棄されたということは、私達にとって結構不利な要素であった。
例えば、こちらに問題があったから婚約破棄されたのではないかと疑われたりするかもしれない。実際にそういう噂を聞いたこともあるし、本当に辛い状況である。
「どこかに誰かいい人がいればいいんですけどね……」
「……もしもよろしかったら」
「はい?」
「もしもよろしかったら、私なんてどうですか?」
悩むラルード様に、私はふとそんなことを言ってみた。
それは冗談半分の交渉である。私にとって、相手は伯爵家の令息だ。その縁談を持って帰ることができれば、大きな収穫である。駄目元でも聞いてみる価値があると思ったのである。
「……なるほど、それはいいかもしれませんね」
「え?」
そんな私に、ラルード様は予想外の返答を返してきた。
思わず私は、変な声を出してしまう。好意的な言葉が返ってくるなんて、まったく思っていなかったからである。
「僕達は、同じ傷を負った者同士です。なんというか、上手くやっていけると思いませんか?」
「そ、それはそうですけど……私は、子爵家の令嬢ですよ」
「別に構いませんよ。父と母も文句は言わないでしょう。こんな状況ですから、いい相手が見つかったと喜んでくれるかもしれません」
「そ、そうですか……」
ラルード様は、私以上にこの縁談に乗り気だった。
そんな彼を見て、私は困惑してしまう。騙されたりしていないだろうか。
そんな風な不安を胸に、私はラルード様との縁談を持ち帰ることになったのだった。