婚約破棄された者同士、円満に契約結婚いたしましょう。
9.燃え上がらない心(モブ視点)
ガラルトもロナメアも、お互いに愛し合っていた。
燃え上がる想いは、止められない。そう思って、二人は婚約破棄を選んだのである。
「ガラルト様、お慕いしています」
「ああ、僕もだよ。ロナメア……」
二人は、お互いに愛を囁き合った。
それがガラルトとロナメアにとって、何よりも至福の時間であったのだ。
そうしてやがて、二人は口づけを交わす。いつも通りであるならば、そのはずだった。
「これから、私達は幸せな未来へと進んでいくのですね?」
「ああ、その通りだとも。父上も納得している」
「お父様も、特に反対はしていません。ふふ、なんだか上手く行き過ぎて怖いくらいですね」
「まあ、僕に任せておけばこのくらいどうということはないさ。僕は優秀だからね」
しかしガラルトもロナメアも、どちらも動かなかった。
いつもなら必要なかったはずの会話を、自然と差し込んでいたのだ。
この瞬間、ある意味において二人の気持ちは繋がっていた。どちらも思っていたのだ。いまいち乗り切れないと。
「このまま、全て上手くいくのでしょうか? その点に関して、私は少しだけ不安に思ってしまいますけれど……」
「上手くいとも。上手くいかせてみせるさ。僕の力でね?」
「頼りにしています、ガラルト様」
「ああ……」
いつも通りなら、勝手に心が盛り上がってくれる。その衝動に身を任せれば、後は何も考える必要がなかった。
そのはずなのに、心の温度が上がらない。二人はそのことに、違和感を覚えていた。
全ては上手くいっているはずだ。心配事もなく、ただ前へと向かって行けばいいだけ。安寧を得たというのに、二人はひどく不安を感じていた。
「……ああそういえば、あの二人はどうなったのでしょうね?」
「二人? ああ、アノテラとラルードのことか?」
「ええ、申し訳ないことをしてしまいましたからね。少しだけ心配です」
そこでロナメアは、心にもない罪悪感から言葉を発した。
本当は、二人のことなんてどうでもよかった。ただ今は、そういう雰囲気になるかもしれない話題を出したかったのだ。
かつての婚約者を肴に盛り上がれる。ロナメアは、何故かそんなことを思っていた。
「まあ、アノテラはああ見えて我が強い女だからな。新しい婚約者探しには苦労しているんじゃないか?」
「それは、ラルード様も同じですよ。彼はちょっと抜けていますからね」
「そう考えると、哀れではあるな。いやしかし、これも仕方ないことだろう。僕と君が結ばれるためには、こうするしかなかったんだ」
「ええ、そうですね」
ガラルトとロナメアは、心の奥底からふつふつと湧き上がってくるものを感じていた。
その衝動に、二人は身を任せる。ゆっくりと口づけを交わして、お互いの顔を見る。
「まあ、あの二人にも何か幸運が訪れるといいですね?」
「ああ、そうだな……」
自分達の選択は正しいものだった。そこで二人は、それを改めて認識する。
しかしながら、二人はまだ知らなかった。その婚約に、既に亀裂が入っているということに。
燃え上がる想いは、止められない。そう思って、二人は婚約破棄を選んだのである。
「ガラルト様、お慕いしています」
「ああ、僕もだよ。ロナメア……」
二人は、お互いに愛を囁き合った。
それがガラルトとロナメアにとって、何よりも至福の時間であったのだ。
そうしてやがて、二人は口づけを交わす。いつも通りであるならば、そのはずだった。
「これから、私達は幸せな未来へと進んでいくのですね?」
「ああ、その通りだとも。父上も納得している」
「お父様も、特に反対はしていません。ふふ、なんだか上手く行き過ぎて怖いくらいですね」
「まあ、僕に任せておけばこのくらいどうということはないさ。僕は優秀だからね」
しかしガラルトもロナメアも、どちらも動かなかった。
いつもなら必要なかったはずの会話を、自然と差し込んでいたのだ。
この瞬間、ある意味において二人の気持ちは繋がっていた。どちらも思っていたのだ。いまいち乗り切れないと。
「このまま、全て上手くいくのでしょうか? その点に関して、私は少しだけ不安に思ってしまいますけれど……」
「上手くいとも。上手くいかせてみせるさ。僕の力でね?」
「頼りにしています、ガラルト様」
「ああ……」
いつも通りなら、勝手に心が盛り上がってくれる。その衝動に身を任せれば、後は何も考える必要がなかった。
そのはずなのに、心の温度が上がらない。二人はそのことに、違和感を覚えていた。
全ては上手くいっているはずだ。心配事もなく、ただ前へと向かって行けばいいだけ。安寧を得たというのに、二人はひどく不安を感じていた。
「……ああそういえば、あの二人はどうなったのでしょうね?」
「二人? ああ、アノテラとラルードのことか?」
「ええ、申し訳ないことをしてしまいましたからね。少しだけ心配です」
そこでロナメアは、心にもない罪悪感から言葉を発した。
本当は、二人のことなんてどうでもよかった。ただ今は、そういう雰囲気になるかもしれない話題を出したかったのだ。
かつての婚約者を肴に盛り上がれる。ロナメアは、何故かそんなことを思っていた。
「まあ、アノテラはああ見えて我が強い女だからな。新しい婚約者探しには苦労しているんじゃないか?」
「それは、ラルード様も同じですよ。彼はちょっと抜けていますからね」
「そう考えると、哀れではあるな。いやしかし、これも仕方ないことだろう。僕と君が結ばれるためには、こうするしかなかったんだ」
「ええ、そうですね」
ガラルトとロナメアは、心の奥底からふつふつと湧き上がってくるものを感じていた。
その衝動に、二人は身を任せる。ゆっくりと口づけを交わして、お互いの顔を見る。
「まあ、あの二人にも何か幸運が訪れるといいですね?」
「ああ、そうだな……」
自分達の選択は正しいものだった。そこで二人は、それを改めて認識する。
しかしながら、二人はまだ知らなかった。その婚約に、既に亀裂が入っているということに。