不運な令嬢の、二度目の恋。



「梨菜様、足元お気をつけ下さい」

「ありがとう……えっと」


 この人、誰だったかな。前はいたかしら。


「申し遅れました、浅田と申します。一年前からお世話になっております運転手です」

「そうなのね、浅田……ね。今日も運転をありがとう」

「いえ。行ってらっしゃいませ」


 お辞儀をしての見送りに少しだけ緊張がほぐされて、料亭に入った。



「いらっしゃいませ、ようこそおいでくださいました。梅ヶ溪様」

「あぁ、女将。今日は貸切にしてしまってすまないね」


 出迎えてくださったのは、桜色のお着物が似合う私と同年代くらいの女性だ。


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