不運な令嬢の、二度目の恋。
「いいえ、【春麗】を使っていただき嬉しく思いますわ」
「ありがとう。そうだ、これが娘の梨菜だ。……梨菜、【春麗】の女将であられる志田野さんだ」
志田野さんは上品に笑って「ご案内いたしますね、どうぞ」と言い個室のテーブル席まで案内してくださった。
「【霞桜】か。懐かしいな」
「はい。父から、梅ヶ溪様の大切な部屋だと聞いていましたのでこちらにさせていただきました」
私は何の話かわからず彼らの目を見ていると「私と梨菜の母もここでお見合いをしたんだ。特にここのお蕎麦は絶品で」と父は話し出した。
二人がお話ししてると、ドアの向こうから「失礼致します。五辻様、ご子息様おいでになりました」と聞こえてきた。すると、ドアが開く。