不運な令嬢の、二度目の恋。
過去の出来事
今から八年前。――私が十六歳、高校三年生のこと。
私は、幼稚園から大学まであるエスカレーター式の学院に通っていた。
「梨菜〜まーた先輩のこと見てるの?」
「うん……だって、カッコいいんだもん」
グラウンドでは、サッカーをしている先輩を眺めていた。
彼は、四歳年上の大学生……五道優吾さん。旧財閥家である五辻家とは親戚関係にある方だ。容姿端麗で成績も良くいつも首席だと聞いたし運動神経も抜群でサッカーのサークルに入りながらもたまに助っ人として体育会系のサークルに顔を出しているらしい。
「確かにかっこいいけど、梨菜は身分的にあれじゃない。お祖母様が許さなそう」
「ふふ、そうね。だけど、見てるだけで幸せだから」
「ふーん……身分があるって時にはめんどくさいのね。好きな人と一緒にいられないなんて」
身分的に……というのは、私の家はもともと、古代に朝廷に仕えていた公家華族で昔は皇室のお姫様も降嫁したといわれている家柄だ。祖母は末裔のひ孫にあたる。
祖母は私が幼い頃から『誇り高き公家華族の血が梨菜にも入っているのだから汚さないようにせねばならぬぞ』と言っていた。
だから当たり前のように、同じような身分の方と結婚しなくてはならない。これは生まれた時から決まっていること。