バー・アンバー 第一巻

山ちゃんからのメッセージ

もう大学名は聞いたからあとはそこの医学部、なかんずく心理学の教授名を検索すればいい。危惧したが医者も看護婦も診察室から追って来なかった。あとは診察代を払ってサヨナラするまでだ。しかしそれにしても俺はなぜこうも狭量なのか、すでに後の祭りではあるが心中で舌打ちしてしまう。相手にぞんざいな態度を取られると我慢ならないのだ。もはやこれまで!とパッと相手を切ってしまう。介護ジャーナリストとしてインタビューを熟すうちにその悪癖もかなり薄らいではいるのだけれど、反面でその憂さ晴らしのように私生活においてはその性癖が強まっているのかも知れない。全体МAD博士がいま聞いたその✕✕大学で心理学教授をしているとは限らないではないか。女医が何かの伝手で他の大学やら病院から非常勤医師を招いている可能性だってあるのだ。ちぇっ、しかし今となってはもう仕方がない。車のナンバーから身元を探るという手もまだあるし、もうここはこれまでだ…などと踏ん切りをつける。むしゃくしゃした呈で会計を待ち続ける。10分、15分と待つがなかなか名を呼ばれない。その間に別の患者が診察室に入って行ったし薬も何も要らないと云ったのだからさっさと会計を済ませればいいではないか、などと思う。貧乏ゆすりをするうちに携帯にメッセージが入った。見れば山口からだ。「海鮮風炉で一杯やろう。OK?」とある。「OK。その前に(午後)3時半頃にそっち(会社)に行くよ」と返す。「おう、わかった」と受けたところでちょうど「田村さーん」と名前を呼ばれた。やれやれだ。「はい」と返事してカウンターに行くと「田村さん、お薬が出ています」という意外な言葉。
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