バー・アンバー 第一巻
ジャーナリストワーク
俺の目が剣呑にでもなったものかママはたじろいだ風情で「ワタシノコトバヅカイ、キニシナクテイイヨ。コワイメシチャ、ダメ。チョーゾウニモドッテシマウ…」と今度はCT発音に戻ってしまっている。これはこれはとばかり俺の思念は錯綜するのだが同時に現れたこの奇跡への、その解明へのとっかかりを摑んだような気にもなっていた。未だまったくおぼろげな感覚でしかないのだがそのインスピレーションに間違いはなかった。なぜならその…自負する分けではないが俺はこの自分のインスピレーションというものに些かでも自信があったからだ。ジャーナリスト言葉で云えば「臭う」というやつでそこに秘密や不正を嗅ぎ取る能力のようなものである。ただ今のこの場においては同じニオウでも「匂う」というのが正しかろう。甘酸っぱいような、前頭葉ではなく心の奥底で、ママからの誘いと云うか掲示と云うか、全身でかもす表示に反応するものがあったのである。この直感が大事なのだが、とは云えそれが思い込みに堕するケースも間々あり、インタビューや資料調べによって普段はそれを補う分けだ。