バー・アンバー 第一巻
殺戮の修羅場
このとき目には見えぬが最前よりまとわりついて離れない、何者か悪しき想念の主が『ほう…』とばかり、感心したかのようなつぶやきを俺に送ってみせる。もっとも至って猜疑心いっぱいという感じなのだが…。
さても、その猜疑心への答えはすぐに示されることとなる。隊列の内の誰かが「来た!」と鋭く声を上げた。列がいっせいにバラけて俺が飛び出てきた側の、紙が空中に乱舞している通路に向って全員が迎撃の姿勢を取る。俺も両拳(こぶし)を固めて固唾を飲んで身構える。紙の向こうから人間の声とも思えぬ、獣の咆哮としか聞こえない異様な雄叫びが迫って来た。そして紙の乱舞から飛び出して来たものは…それはなんと、人間ではなく獣人どもだったのだ!全身毛むくじゃらでその口には牙が生え真っ赤にぎらつく目は悪魔そのものだ。それぞれが身長2メートルほどもありモーニングスターやメイス、あるいは大剣などを手にしている。数は(俺の?)部隊と同じ10数人…いや10数匹ほどか。その怪物どもがいっせいに部隊に打ちかかる。あちらで頭が潰されこちらで首が飛び、剰え隊員の身体を引きちぎっては貪り食う始末。その様は戦闘と云うよりは一方的な殺戮でありとても直視に堪えない。そのうちの一匹が、戦闘に加わらず離れたところで身体を氷つかせていた俺を直視した。脇に抱えていた血だらけの隊員の身体を放り投げ、口に咥えた腕を吐き捨てると、口から血を滴らせながらなにごとか獣語で呪いの言葉を吐きつつ一歩二歩と俺に迫って来た。
さても、その猜疑心への答えはすぐに示されることとなる。隊列の内の誰かが「来た!」と鋭く声を上げた。列がいっせいにバラけて俺が飛び出てきた側の、紙が空中に乱舞している通路に向って全員が迎撃の姿勢を取る。俺も両拳(こぶし)を固めて固唾を飲んで身構える。紙の向こうから人間の声とも思えぬ、獣の咆哮としか聞こえない異様な雄叫びが迫って来た。そして紙の乱舞から飛び出して来たものは…それはなんと、人間ではなく獣人どもだったのだ!全身毛むくじゃらでその口には牙が生え真っ赤にぎらつく目は悪魔そのものだ。それぞれが身長2メートルほどもありモーニングスターやメイス、あるいは大剣などを手にしている。数は(俺の?)部隊と同じ10数人…いや10数匹ほどか。その怪物どもがいっせいに部隊に打ちかかる。あちらで頭が潰されこちらで首が飛び、剰え隊員の身体を引きちぎっては貪り食う始末。その様は戦闘と云うよりは一方的な殺戮でありとても直視に堪えない。そのうちの一匹が、戦闘に加わらず離れたところで身体を氷つかせていた俺を直視した。脇に抱えていた血だらけの隊員の身体を放り投げ、口に咥えた腕を吐き捨てると、口から血を滴らせながらなにごとか獣語で呪いの言葉を吐きつつ一歩二歩と俺に迫って来た。