妹に彼氏を寝取られ傷心していた地味女の私がナンパしてきた年下イケメンと一夜を共にしたら、驚く程に甘い溺愛が待っていました【完】
人生で初めて味わった、喪失感。
全てがどうでも良くなった。
このままじゃ、これから先もずっとこうなのかとさえ思った。
だから、荒木田の姓を名乗るのが嫌になった。
その日俺は隣町まで出て来て、一人、橋の上で川を眺めてた。
別にここから飛び降りたって死ぬ訳じゃないし、そもそも死ぬつもりも無かったのに、俺があまりにも思い詰めた顔をしていたからか、勘違いした一人の女が、声を掛けてきた。
「駄目だよ、命を粗末にしちゃ。何があったかしらないけど、辛いなら、話聞くから……考え直して?」
「……別に、何も」
「そんな辛そうな顔して、何も無いって事は無いでしょ? 話聞くくらいしか出来ないけど、話せば楽になるかもしれないよ? ね?」
正直、なんだコイツ、関係無いくせに、鬱陶しいって思った。
話したところで、今更彼女と親友が戻ってくる訳じゃないし、無かった事にもならないのにって。
けど、見ず知らずの俺の為に何でそこまで一生懸命になれるのか不思議で、お人好しそうなその女に少しだけ興味が湧いた俺は、とりあえず話してみる事にした。
「……そっか、そんな事が。それは、辛かったね」
「……まあな」
「大切な人を同時に失うなんて、本当に、辛いね」
「……ま、もう今更だけどな」
「でも、辛い思いをしたら、その分きっと、良い事もあるよ! だから……」
「つーかさ、俺別に死ぬつもりとか無いから」
「え?」
「あの橋から飛び降りたくらいじゃ、死ねないと思うし。ただ、眺めてただけ」
「な、何だ、そうだったんだ? 私、てっきり死ぬつもりなのかと思って」
「天然かよ」
「そんな事ないよ……。でも良かった、笑ってくれて」
「!」
「少しは元気になった?」
「……まあ、な」
「それなら良かった! あ、そろそろ帰らなきゃ! 君も、そろそろ帰った方がいいよ?」
「……ああ、そーする」
「それじゃ、バイバイ」
「ああ」
とにかく、不思議な奴だった。
見知らぬ俺の為に話を聞いてくれた彼女をもっと知りたいと思ったけど、どうせもう会う事も無いだろうし、俺はもう、恋愛とかそういうのもする気は無くて、彼女に名前を教える事も、連絡先を聞く事もしなかった。
けど、その人は生徒手帳を落としていて、俺は彼女の名前だけ、知る事になった。
「ねぇ、忘れ物!」
「え?」
「これ!」
「あ! 拾ってくれてありがとう! それじゃあね」
まあでも、名前だけ知ったところで意味無いし、そのうち忘れるだろうってその時は思ったけど、
俺の中で彼女は、いつの間にか特別な存在になっていたらしい。
全てがどうでも良くなった。
このままじゃ、これから先もずっとこうなのかとさえ思った。
だから、荒木田の姓を名乗るのが嫌になった。
その日俺は隣町まで出て来て、一人、橋の上で川を眺めてた。
別にここから飛び降りたって死ぬ訳じゃないし、そもそも死ぬつもりも無かったのに、俺があまりにも思い詰めた顔をしていたからか、勘違いした一人の女が、声を掛けてきた。
「駄目だよ、命を粗末にしちゃ。何があったかしらないけど、辛いなら、話聞くから……考え直して?」
「……別に、何も」
「そんな辛そうな顔して、何も無いって事は無いでしょ? 話聞くくらいしか出来ないけど、話せば楽になるかもしれないよ? ね?」
正直、なんだコイツ、関係無いくせに、鬱陶しいって思った。
話したところで、今更彼女と親友が戻ってくる訳じゃないし、無かった事にもならないのにって。
けど、見ず知らずの俺の為に何でそこまで一生懸命になれるのか不思議で、お人好しそうなその女に少しだけ興味が湧いた俺は、とりあえず話してみる事にした。
「……そっか、そんな事が。それは、辛かったね」
「……まあな」
「大切な人を同時に失うなんて、本当に、辛いね」
「……ま、もう今更だけどな」
「でも、辛い思いをしたら、その分きっと、良い事もあるよ! だから……」
「つーかさ、俺別に死ぬつもりとか無いから」
「え?」
「あの橋から飛び降りたくらいじゃ、死ねないと思うし。ただ、眺めてただけ」
「な、何だ、そうだったんだ? 私、てっきり死ぬつもりなのかと思って」
「天然かよ」
「そんな事ないよ……。でも良かった、笑ってくれて」
「!」
「少しは元気になった?」
「……まあ、な」
「それなら良かった! あ、そろそろ帰らなきゃ! 君も、そろそろ帰った方がいいよ?」
「……ああ、そーする」
「それじゃ、バイバイ」
「ああ」
とにかく、不思議な奴だった。
見知らぬ俺の為に話を聞いてくれた彼女をもっと知りたいと思ったけど、どうせもう会う事も無いだろうし、俺はもう、恋愛とかそういうのもする気は無くて、彼女に名前を教える事も、連絡先を聞く事もしなかった。
けど、その人は生徒手帳を落としていて、俺は彼女の名前だけ、知る事になった。
「ねぇ、忘れ物!」
「え?」
「これ!」
「あ! 拾ってくれてありがとう! それじゃあね」
まあでも、名前だけ知ったところで意味無いし、そのうち忘れるだろうってその時は思ったけど、
俺の中で彼女は、いつの間にか特別な存在になっていたらしい。