世界を救わなくったって
フィアーバと一緒に、馬車でパーティー会場に向かう。

魔王討伐を祝うパーティーらしい。
私は国のお偉い方に詳しくない。
勝手に旅に出て、勝手に魔王を討伐したので、国のお偉い方も、突然知らない人間が魔王を討伐したと聞いて驚いただろう。

魔王を討伐して数週間しか経ってないのに、どこからパーティーをするお金を集めたのかは不明だけど……
魔王討伐に使うはずだったお金とかかもしれない。
まぁ、一生着る機会がないと思っていたドレスを着れたから、いっか。


「着いたみたいだな」


ずっと外を見ていたフィアーバが、ぽつりと呟いた。
フィアーバは先に馬車から降りると、私に手を差し出した。
私はその手を握り、馬車から降りる。

馬車から降りた後も、フィアーバは私の手を離さなかった。
それが少し嬉しくて、にやけそうになるのを必死におさえる。


「おっ、来たな。二人共」


聞き覚えのある声が聞こえた。


「ムンターさんも来たんですね。あんなにイヤがってたのに……」

「フィアーバこそ」

「テイルが強制参加だと聞いたので」


……あっ。

フィアーバと話している姿を見て、やっと思い出した。
あの人、フィアーバと一緒に旅をしていた人だ。

魔王討伐の報告以降、私はこの人と会っていなかった。
フィアーバはその後も会ってたらしい。
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