世界を救わなくったって
王様のおかげで、関係のないことまで考える余裕ができた。
緊張はしているけれどね。
パーティーでは、魔王を討伐した勇者として私が紹介されるらしい。
当たり前だけど。
すっごくイヤだけど。
もし私が魔王を倒していない一般人だったら、「魔王を倒した人を紹介すらしないなんて」とか思っちゃうからね。

パーティーでは、オネスト以外の王様の子供も参加するらしい。
少し離れた場所に、オネストたちがいる。
チラチラと私を見ては、何か話している。
オネストは、化粧をしている私を「田舎女のテイル」と気付いていないようだ。


「誰ですの?あの安そうなドレスの女」


すっごいなぁオネスト。
誰にでも喧嘩を売ってるよ、あの子。
わざわざ私に聞こえる大きい声で言うあたり、本当に性格がアレだね。
でも、私が金持ちからしたら安いドレスを着ているのは事実だから、何も言えない。


「これだから世間知らずは」

「あらあら、お兄様。仕方ないじゃありませんか。オネストはまだまだ子供ですもの」

「姉さんの言う通りですよ、兄さん。オネストはまだ、自分たちの未熟さに気付いていないのです。可哀想に」


あっ、もっとすごい人たちだ。
オネストより強い。

あと、オネストだけは、まだ私たちに魔王討伐の報酬が出されていないと知らないっぽい。
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