世界を救わなくったって
たくさんの目が、私を見ている。


「あの女の子が勇者……?」

「可愛い」

「あんな女の子でも倒せる魔王って、そんなに強くないんじゃないの?」


勇者がこんな女で悪かったね!
でも、私が魔王を倒したのは真実だよ。

王様は優しい笑顔で私を見た。


「勇者テイルよ。君のおかげで、私達は魔王の恐怖に怯えることなく生きていける。魔王を倒してくれてありがとう」

「はい」


勇者の紹介はアッサリ終わった。

よかったー!
最初に声が裏返っただけで、移動中にころんだりとかはしなかった。

勇者の紹介が終われば、私は自由の身だ。

王様の話が終わり、会場に集まった人たちが自由に飲み食いしたり話したりしているなか、私はフィアーバを探す。


「勇者様、お話をしませんこと?」

「これはこれは、ずいぶん可愛らしい勇者だ」

「魔王はどんな見た目でしたか?」


人が壁になって進めなくなることってあるんだなぁ……

ものの数十秒で、知らない人たちに、四方を囲まれてしまった。
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