世界を救わなくったって
手をケガしたので、女性魔法使いに、会場と離れた位置にある客室らしき場所に案内された。
豪華なソファやベッドがある。

フィアーバは、ケガをしていない方の私の手をずっと握っていた。
心配しているのだろう。


「勇者様、勇気があるのは大変すばらしことですが、どうか、自分の身を大切にしてください」


魔法使いは、魔法で私のケガを治してくれた。
キズ跡も、痛みも残っていない。


「ありがとうございます」

「わたしには、これくらいしかできないので……」


魔法使いは小さく微笑むと、「わたしはこれで失礼します」と言い、部屋から出た。

ドッと、疲れが急におしよせてきた。


「……疲れた」


慣れないことをすると、短時間でも体力を奪われてしまう。


「お疲れ。座ったらどうだ?」

「うん、そうする」


フィアーバに言われた通り、私はソファに座った。

フカフカしている。
気を抜いたら眠ってしまいそうだ。

私の隣に、フィアーバが座る。


「助けてくれて、ありがとう」


彼は、まっすぐ前を見ていた。
その顔は、どこか悲しそうに見える。


「それはこっちのセリフだよ。ありがとう」


フィアーバがいなかったら、私は死んでたから。
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