【短編】私、彼女失格です!?
「では今日の一限は体育館に移動します。各自で間に合うように行ってください。」
先生の話が終わるとみんな体育館シューズを持って、廊下に出た。
「あいちゃん。早く!行こ行こ!」
「あ、うん。」
ゆずがこんなにも張り切っているのはすぐわかる。
体育館までの道は優の教室の前を通るからだ。
同じ学年だけど、教室が位置している塔は違うから校内で会うのはレアだ。
ゆずと一緒に廊下を歩く。
そして優の教室が見えるなり、急に歩きがゆっくりになった。
そして、優が出て来たタイミングでゆずが進む。
私もゆずに付き合わせてさりげなくこんなことしてたなと思う。
優は私に気づいて、下の方で小さく手を振ってくれた。
いつもは嬉しいけれど、今はゆずの気持ちを知ってしまったからハラハラドキドキする。
ゆずはというとそのことに気づいていない様子だった。
そして二人で優の後ろを歩く。
廊下には同学年の人がたくさんいるから、私たちが優の後ろをガッツリガードしていても誰も不自然に思っていないようだった。
そして体育館に近ずくにつれ、人が多くなってきた。
体育館の鍵があいてないらしく、止まってしまっている。
学年代表の女の子が「ごめん、通してー。」
と言いながら鍵を職員室に取りに行った。
その間、後ろからも前からも人に押され、もみくしゃの状態だった。
私の学年は200人前後いるから仕方ない。
でも、周りには優を含め、まあまあの男子がいて私は触れないようにと必死だった。
でも、後ろから押されたと同時に優の近くスレスレまで行ってしまった。
私は思わず目をつぶる。
するとそれに気づいたゆずが私の前に移動した。
そして、私と優の間にさりげなく入る。
ゆずは私の事情を知っているから気をつかってくれたのかもしれない。
ゆずと優の肩が触れる。
優の表情は見えない。
私はそれが悲しかった。
だけど、私は優に触れられない。
優は私のなのに。
私が優の彼女なのに。
それから学年代表の女の子が鍵を開けて、いつも通り整列する。
クラスが違うから並んでしまったらもう優を見ることはできない。
そこから合唱の練習が終わるまで、やけに長く感じた。