一日限りの恋人のはずが予期せぬ愛にくるまれました
「協力してあげますよぉ」
申し出は迷惑だった。私の気持ちは憧れ程度で、見ているだけで良かった。
鮫島さんは私の前で辻谷さんに話しかけることが増えた。
そうして、あとで私に絡むのだ。
辻谷先輩、チョコレートが好きなんですって。
辻谷さん、髪の長い女性が好みなんですって。
貴彦さん、おしゃれな人が好きなんですって。
いつの間にか、下の名前で呼ぶようになっていた。
私の前でことさら親し気に話す姿は不愉快だった。
私は休憩時間にチョコレートを食べるのをやめて、胸まであった髪を肩まで切った。おしゃれはとうにやめていた。
お昼に公園の花を見ながらお弁当を食べるのが唯一の癒しの時間だった。
花に詳しいわけじゃない。けど、色とりどりの花を見ているだけで、なんだか癒される。
今は花壇にサフィニアが植えられていた。スペースによって大ぶりのサフィニア、ふちどりがあるような花びらのサフィニアアート、八重咲のサフィニアフリル、となっていた。
転職が頭をよぎることもあったが、もっとお金をためてからにしたい。
今の仕事にやりがいを感じてもいる。
いい物件に出会えた、と喜ぶお客様の顔を見るのが一番の楽しみだ。
貸主さんが「いい借主を紹介してくれて」と喜ぶのもうれしい。物件の写真はどう撮れば素敵に見えるのか研究したし、お客様の質問には全部答えられるようにがんばった。
お弁当を食べ終えると、暗くなりがちな気持ちに活をいれて、ベンチから立ち上がった。
職場に戻った私は、ロッカールームで運悪く鮫島さんに出くわした。ほかに人はいなかった。
「せんぱーい、どこ行ってたんですかぁ」
「ごはんに」
短く答え、ロッカーに弁当箱をしまう。
「報告したいことがあってぇ」
今度は何を、と警戒する。
「ごめんなさい、貴彦さんとつきあうことになりましたぁ」
瞬間、崖から突き落とされた気分になった。
いつかそうなると予想はしていた。
だけど本当にそうなってしまったら、やはりショックだ。
「どうしても私でないとダメだって言われてぇ」
「おめでとう」
血の気の引いた顔で答える。
午後は仕事が手につかなかった。
申し出は迷惑だった。私の気持ちは憧れ程度で、見ているだけで良かった。
鮫島さんは私の前で辻谷さんに話しかけることが増えた。
そうして、あとで私に絡むのだ。
辻谷先輩、チョコレートが好きなんですって。
辻谷さん、髪の長い女性が好みなんですって。
貴彦さん、おしゃれな人が好きなんですって。
いつの間にか、下の名前で呼ぶようになっていた。
私の前でことさら親し気に話す姿は不愉快だった。
私は休憩時間にチョコレートを食べるのをやめて、胸まであった髪を肩まで切った。おしゃれはとうにやめていた。
お昼に公園の花を見ながらお弁当を食べるのが唯一の癒しの時間だった。
花に詳しいわけじゃない。けど、色とりどりの花を見ているだけで、なんだか癒される。
今は花壇にサフィニアが植えられていた。スペースによって大ぶりのサフィニア、ふちどりがあるような花びらのサフィニアアート、八重咲のサフィニアフリル、となっていた。
転職が頭をよぎることもあったが、もっとお金をためてからにしたい。
今の仕事にやりがいを感じてもいる。
いい物件に出会えた、と喜ぶお客様の顔を見るのが一番の楽しみだ。
貸主さんが「いい借主を紹介してくれて」と喜ぶのもうれしい。物件の写真はどう撮れば素敵に見えるのか研究したし、お客様の質問には全部答えられるようにがんばった。
お弁当を食べ終えると、暗くなりがちな気持ちに活をいれて、ベンチから立ち上がった。
職場に戻った私は、ロッカールームで運悪く鮫島さんに出くわした。ほかに人はいなかった。
「せんぱーい、どこ行ってたんですかぁ」
「ごはんに」
短く答え、ロッカーに弁当箱をしまう。
「報告したいことがあってぇ」
今度は何を、と警戒する。
「ごめんなさい、貴彦さんとつきあうことになりましたぁ」
瞬間、崖から突き落とされた気分になった。
いつかそうなると予想はしていた。
だけど本当にそうなってしまったら、やはりショックだ。
「どうしても私でないとダメだって言われてぇ」
「おめでとう」
血の気の引いた顔で答える。
午後は仕事が手につかなかった。