狼上司と秘密の関係
☆☆☆

大和が取ってくれた部屋は最上階のウイートルームだった。
入った瞬間に広がる広い部屋に頭がクラクラしてしまう。
「すごい部屋ですね」

泊まったことのないような高級感のある部屋に戸惑って、足が止まってしまう。
そんな千明を追い越して大和は大きなソファに腰をおろした。
さすがに今日1日遊んで疲れたようで、背もたれを存分に使っている。

ソファの前にある大きめのテーブルにはウエルカムフルーツが籠に入れられていた。
「高かったんじゃないですか?」
千明は大和の隣に座って聞く。

食事が終わる頃には少しはリラックスしていたのに、この部屋を見てまた緊張してきてしまった。
「値段のことなんて気にしなくていい」
大和が笑う。

観光地の幹部クラスがどれくらいの給料をもらっているのかわからないけれど、千明が思っている何倍ももらっているのかもしれない。
それにしては飾った様子のない大和には好印象を抱く。

「今日は満月じゃない。だけど俺の本当の姿をちゃんと見て欲しいと思ってる」
居住まいを正してソファに浅く腰をかけ直す。
「はい」
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