狼上司と秘密の関係
千明は真剣な表情で頷いた。
でも、満月じゃないのなら狼男が狼に変身することはないんじゃない?

そう思ったときだった。
突然抱きしめられて一瞬頭の中が真っ白になる。

次にようやく我に返って「あ、あの、大和さん?」と、抱きしめられたまま名前を呼んだ。
大和はジッと固まったように動かない。

ふたりの呼吸音や心音が重なり合って、まるでひとつになってしまったような照れくささを感じる。
「満月じゃなくても、野性的な行動で俺の体は変化する」

耳元で大和がささやく。
その意味を理解するより前にソファに押し倒されていた。

大和の顔がすぐ近くにあって心臓が飛び出してしまいそうだ。
恥ずかしさに顔をそむけたくなるけれど、それもできない距離感。
近づいてきた大和の唇が千明の唇に押し当てられた。

柔らかくて、熱すぎる体温。
大和の喉の奥から野性的な唸り声が漏れて出たとき、体が離されていた。
< 106 / 209 >

この作品をシェア

pagetop