狼上司と秘密の関係
大和が苦しそうに顔を歪めている。
「大和さん!?」
「大丈夫だから……」
そういう口からは長い犬歯が除く。

大和が乱暴にTシャツを脱ぎ捨てると、筋肉がついた胸板が現れた。
ところどころ血管が浮き出していて相当なトレーニングをしていないとここまでの筋肉はつかないと思わせる。

更に目の色が色から銀色へと代わり、普段の大和からどんどん遠ざかっていく。
千明は一瞬恐怖を感じたけれど、逃げなかった。
目の前で変貌を遂げる大和をジッと見つめる。

「これが、俺の本当の姿だ」
童話に聞く狼の姿ではない。
かといって普通の人間でもない。

ほとんど人間の姿を保ちつつも、屈強な体と動物の目を持つ生き物になっていた。
「人間でも狼でもない。中途半端な存在だ」
千明はなにも言えなかった。

毛むくじゃらになるわけでもなく、人間を襲って食べるわけでもない。
だけど口から覗いている牙は明らかに人間のものではなかった。
狼の牙。
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