狼上司と秘密の関係
☆☆☆

それからは仕事も順調で、特になんの問題もなく数日が経過していた。
変わったことと言えばメッセージのやり取りのときに敬語じゃなくなったことくらいだった。

職場で大和とふたりきりになったときにはできるだけ敬語を避けているけれど、仕事中はやっぱり上手くいかなかった。
だけど『菊池さん』が『大和さん』に切り替わったところは変化がなく、梨江と晋也にまた茶化されてしまった。

「今日は体験教室に来てくれてありがとう」
その日は日曜日で、朝から幼稚園の団体さんがアイスクリーム作り体験に来ていた。

外はよく晴れていて、玉転がしには持ってこいだ。
千明の声に沢山の園児たちと保護者が元気に「はぁい」と挨拶してくる。
小さな手のひらが空へと向かって突き出される様子は微笑ましい。

「それじゃ、これから玉を転がして行きまぁす」
子供にとってはこれが一番楽しいところだ。
さっき室内で材料を入れた玉をみんなが一斉に転がし始める。

芝生の下では玉があらぬ方向へ転がって行かないように、梨江と晋也が見張っている。
そ、そのときだった。
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