狼上司と秘密の関係
☆☆☆

子どもたちが無事にアイスクリームを平らげた頃、千明のエプロンの裾を掴んで引っ張ってきた子がいた。
振り向くとそれは怪我をして大泣きしていた女の子だ。

後ろにはちゃんと父親もついている。
「お姉さん、これ」
女の子が差し出してきた白い紙を、千明は背を屈めて受け取った。
「これはなに?」

「どうしてもお礼がしたいって言うので、さっき文字を教えたんです」
父親に説明されて千明は紙を開く。
そこにはつたない文字で『とても楽しかったよ。ありがとう』と書かれている。

その文字の下にはアイスクリームの絵と、エプロンをつけた女性の絵が描かれている。
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