狼上司と秘密の関係
「それで、今日はなにか話したいことがあったんじゃないの?」
何気なくテレビに視線をやりながら質問する。
画面の中では女の子が幽霊を目撃したところだった。

キャアキャアと耳障りな悲鳴が聞こえてくる。
「まぁ、ね」
梨江にしては煮え切らない返事だ。

見ると梨江はスルメを唇に挟んだ状態で図鑑を見つめている。
「狼、興味あるの?」
「いや、別にないよ」

そう言ってパタンと図鑑を閉じてしまった。
興味があれば狼について話しができると思っていたので、ちょっとだけ残念だ。

ここ数日はずっと同じ図鑑ばかり読んでいるから少しずつ狼についての知識もついてきていた。
それが役立つかどうかは、わからないけれど。
「恋って難しいよね」

突然始まった色恋沙汰の話題に千明は思わず吹き出してしまいそうになった。
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