狼上司と秘密の関係
「うん」
「もしかして……」
職場でしか関係を築いてきていなかったから、すぐに当てはまる人物が脳裏に浮かんでくる。
いつもおちゃらけた様子の晋也だ。

「その、もしかしてだよぉ」
梨江は苦しげな声でうめいてクッションに顔をうずめた。
「で、でも晋也とは一緒に映画見たりしてるんだよね? 仲いいじゃん」

「だから問題なんだよぅ」
梨江はクッションから顔をあげず、くぐもった声で反論してきた。
なにが問題なのかわからなくて首をかしげる。

「最初は距離が縮まって嬉しかったけどさぁ、今では完全にただの友達って感じ!」
そう言われてハッとする。

確かに梨江と晋也の間にあるのは甘い男女の関係からはかけ離れた空気だ。
その上一緒に映画を見ても特別なにも起こらないままきているということは、恋愛に発展する可能性は極めて低そうだ。

「私達さぁ。もう少し積極的になってもいいのかもね」
梨江が気を取り直すように顔を上げて呟く。

「積極的?」
「そうだよ。菊池さんとの関係は順調かもしれないけど、少なくても私は告白もできてない。こんなんじゃダメだよね!?」
< 140 / 209 >

この作品をシェア

pagetop