狼上司と秘密の関係
その分過保護になっても仕方ないんです』
『わかってる、つもりですけど……』
千明は両手を握りしめてうつむいた。

ただ子供が好きというだけではこの仕事は務まらない。
それがようやくわかってきた。
親たちに心配をかけてはいけない。

親たちのクレームから逃げてはいけない。
子供のことだけでなく、その親のことまで考える必要があることを思い知らさせた。

それから数カ月後、千明は園をやめた。
大きな出来事があったわけじゃない。

けれどどうしても仕事に馴染むことができなかった。
園で働く最後の日は受け持つクラスの子が全員で折り紙を折ってプレゼントしてくれた。

それは本当に心から嬉しいと感じる出来事だった。
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